表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
四月 桜満開
116/120

116

 《さくらい 店番》


 今年の桜は、遅咲きなんやって。

 私はカレンダーを見ているんや。

 四月の上旬、もう少しで子供は学校の時期やざ。

 なんか、いろいろあったなあ。

 三月はよう、お菓子が売れたざ。

 理由は羊羹対決なんや。

 もう少し言えば、私が派手に倒れたからみたいなんや。

 それがヤケに、テレビ映り良かったんやって。

 おかげさまで、三月は忙しかった。

 けど、熱しやすく冷めやすい。

 まあコレは、福井人に限ったことではないけどや。

 「早苗、おやつやざ」

 オカンの声や。

 「わかったざあ」

 私は笑た。

 忙しいのもええけど、やっぱりおやつやなあ。



 最終話 桜と団子と

 

 《おやつ》


 今日のおやつは、団子やざ。

 そう言われてみたら、朝に創っとったやつやざ。

 これは売りモンやないんな。

 「早苗、今日は団子やざ。みたらしでも、餡もない団子やでな」

 オカンが言うたって。

 やれやれ……オカンがダイエットする言うたのは知っとるけど、それやったら食べんほうがええんやざ

 なんては言えんわ。

 おやつ、なしになるで。

 そう言えば、餡をしばらく食べとらんなあ。

 「早苗、はよ食べや。一応は、砂糖入っとるから、甘味はあるでな」

 ばあちゃんが、お茶を飲みながら言うたざ。

 香ばしいお茶の匂いやなあ。

 私はちゃぶ台に座ると、手を合わせたんや。

 「いただきます!」

 団子をかぶりついたって。

 団子は大きな玉で、三つあるんやけど……一口では口に入らんかったざ

 けど、美味しいんやざ。

 甘さが控え目で、それでいてモチモチしとるんやって。

 欲を言えば、餡が欲しいなあ。

 小豆は和菓子の全てやもん!

 

 言い切ったざ!


 「私はもう食べたから、少し歩いてくるでな」

 オカンが言うたざ。

 なんやろ? オカン、なんでダイエットする気になったんや?

 「ごめんください」

 ん? 誰やろ?

 「はーい」

 私は店へ戻って行ったざ。



 《店中 お客さん》


 店には若い男のお客さんやざ。

 とは言っても、三十代くらいやろか?

 「あっ、テレビの人や」

 いきなりお客さんが、笑たって。

 なんなんや?

 「あのー、何ですか?」

 私は怪しげに、聞いたざ。

 「あっ、すみません。自分は、県外から単身赴任で福井に来ました。来たのは、冬でした。水羊羹対決でアンケートされて、テレビにて読み上げられたモノなんです」

 水羊羹対決?

 おそらく、羊羹対決やな。

 読み上げ……読み上げ……あっ!

 「はいはいはい、あの時はありがとうやって!」

 「いえ、あの時は派手に倒れましたね。新型インフルエンザですから、仕方ありませんけどね。僕もそこにいまして、注射とクスリ貰いました」

 アハハハハ……なんて言えばええんやろ?

 「気にしないでください。自分は和田課長の替わりに、対決応援に行ったんですから」

 お客さんが、笑てるざ。

 ん? 和田課長?

 ……まさか!

 「あの雑居ビルの和田さんなんか?」

 「はい、その部下でして……少し前に、三十路になりました。コレは名刺です」

 私は名刺を見たんや

 えーと、佐藤 一郎さん……どこにでも居そうな名前やの

 そして、福井物流課長……ん?

 「和田さんと、よう似た位なんですか?」

 「いえ、和田課長は、本社に帰るんです」

 「え!」

 私はビックリして、大きな声がでてもたざ。

 「サラリーマンの厳しいとこですよ。いきなりですからね。後任が私ですわ」

 佐藤さんは、ニコニコしとるんやって。

 なんやろ? 読めんざ。

 心の中が、ようわからん。

 和田さんは結構顔に出とったけど、この人はわからんざ。

 「和田さんは、まだ福井に居ます。実はいきなり過ぎて、引き継ぎが追いついてないんです」

 そうなんか?  

 ……確かこの人、福井に来たんはバレンタインデーつまり、羊羹対決頃やとして、二カ月いるんやざ!

 「いろいろあるんですよ。顔に出てますよ! 確かに普通はそう思いますよ」

 佐藤さんが、読んだみたいや。

 私の心を。

 「さて、本題に入ります」

 「は、はい」

 なんや、いきなりスイッチ入ったみたいやざ。

 「実は三日後、和田さんの送別会をします。幹事は自分なんですが、足羽山で花見をしようと思います」

 「へえ、お花見ですかあ」

 「はい、スマホで検索して、事務所のばあちゃんに意見を聞きながら、ここに決めたんです。時期的にも満開とアドバイスされましたのもありました」

 佐藤さん笑顔で、言うたざ。

 なんやろ、和田さんとは明らかにタイプが違うって。

 「それでお願いなんですが、実は和田さんお酒好きなんですよ」

 「へ?」

 それは初耳やざ。って、その前に和菓子屋にお酒の話するなや!

 「まあ、お酒は別にいいです。ここは酒屋じゃあないですしね。本題ですよ、ズバリ! お酒に合う和菓子を創ってください」

 「え? お酒に合うお菓子ですか?」

 私は声が裏返ったって!

 お酒に、お菓子ですか!

 声にならない驚きやったって。

 「和田さんから聞きました。一年くらい前に、さくらい でお菓子を注文した時にオーダーメードで創ってくれたと。だから今回は自分がそれをお願いに来たんです」

 佐藤さんが言うたざ。

 確かに注文に答えたけど……よし!

 「やってみますざ」

 「本当ですか、頼んでみて良かったあ!」

 佐藤さんが、パアーッと明るくなったんやって。

 これは……なんかありそうやの

 まあ、ええんやげど。

 「お願いします。情報として和田さんは、日本酒派です。ビールはあまり好きでないです。焼酎はまたにです。日本酒は大好物……すごい酒豪なんですよ」

 「え? 本当なんかぁ?」

 「はい、普段はあまり飲みません……らしいですけどね」

 佐藤さんが笑いながら言うた。

 へえー、わからんモンやなあ。

 「では、お願いします! 何かあったら、名刺の電話番組に電話ください。携帯番号もありますから」

 そう言って、佐藤さんは さくらいを後にしたんやわ。

 

 そうなんや、和田さん帰るんや。

 ここは、餞別の意味を込めてお菓子創らなあかんの。

 さて……やってみっざ!


 

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ