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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
三途の川 再開 そして……
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 《隔離病棟 幸隆 沙織 オカン》


 「なんや、こんなへんな服! マスクも厚いし、私は目悪ないぞ!」

 「オカン、これは防御服やざ。これ着けな、ねえちゃんとこに行けんのや」

 「なんやてか! 私、一度かかっとるんや! 意味ないざ」

 「けど……」

 「お母さん、沙織ちゃん、静かにやざ。ベッドの上で早苗が闘っとる。邪魔したらアカンのや」

 「ねえちゃん、白いテントみたいな入れもんはいっとる。そこで顔色悪く眠って……なんでやの?」

 「神様はなんで、私を桜井 祥子を生かしたんや。ワテが死んだら、こんなんに……早苗はこんなんにならんかったんやあ」

 「オカン……」

 「お母さん、沙織ちゃん、信じよう。今は、早苗を信じよう」



 《医大 一般ロビー 礼二 奈緒子》


 「早苗さんは、危篤や」

 「礼二さん、わかってるざ」

 「……」  

 「なんや? だんまりなんか?」

 「はい、一つだけ、今は早苗さんを信じましょう」

 「そやな、あのバカ母から、感染するなんて!」

 「奥様……いや、奈緒子さん、それを今言ってる場合ではないですざ。早苗さんは闘ってるんや。俺は……」

 「祈るだけやな。今は……祈るだけ……」



 《医大病院前 香奈待ち合わせ 喜一郎 耕平到着》


 「遅れてスミマセン、お母さん」

 「本当や遅いわ、耕平!」

 「香奈、そう言うなや、耕平かて一生懸命やったんや。早苗の部屋はどこや?」

 「さあ、お母さん、知りませんか? 祥子と同じ病室やろ?」

 「この場所から、反対側や。人気があまりないんや。隔離されとる」

 「隔離って!」

 「父さん、そんだけ重いんやと……」

 「うるさいわ、我が娘にそんな冷静になっとるお前がわからんわ」

 「止めや、じいさん、ここで声上げても何もならん。さっ、早よお医者さまから、クスリと注射してもらうんやぞ」

 「クスリ? 注射?」

 「ウイルス感染を防ぐクスリに、予防接種や、これせんと早苗に近づけんざ」

 「……早苗、そんな重いんか? お母さん」

 「大丈夫! 大丈夫や! 耕平」

 「……そうですか、それにしてもヤケに手際良いよたいな」

 「耕平、さすがやな。これは、幸一郎のおかげやぞ」

 「え? 父さん?」

 「市議会議員の副議長は、昔は……なんや」

 「本当かあ、じいさん」

 「そうなんやって」



 《高塚屋 亮 電話あり相手 咲裕美》


 「亮さん、何でやの? 早苗ねえちゃん、何でやのお」

 「咲裕、ごめんな、わからんかったんや。ずっと普通やったんやって。まさか、新型インフルエンザにかかっとったなんて……」

 「ごめん、こんなん、亮さんに言ってもしゃーないな。亮さんかて感染しとるかも……」

 「心配ないざ、新型インフルエンザと判明したとき、そこにいた関係に予防接種と、クスリがふるまわれたんやざ」

 「え?」

 「松浦商事の実費や。早苗さんの、彼氏とお母さんが、働きかけたそうやざ、それと確かもう一人いたんやけど……忘れたざスマン!」

 「……でも、肝心の早苗ねえちゃんは、今、どうなんや」

 「それはわからん。一度、病院に電話やろ」

 「……怖いんや。早苗ねえちゃんが、まさかなんてこと」

 「……咲裕、お前、言うてたやろ。早苗ねえちゃんは、私にとって雲の上の存在や、何やっても勝てんのやって」

 「うん、それがなんなん?」

 「勝つんやろ、どんな事でもやざ」

 「……うん、ねえちゃん、勝てるざ」

 「勝てるんやで、怖がることないざ。さあ、早よ電話せい」

 「うん、亮さん、ありがとうやざ」



 《医大病院 自販機前 連 副議長》


 「あのー、おじいちゃんでええですか?」

 「うん? まあ、しゃーないわ」

 「おじいちゃん、コーヒーありがとうです」

 「ありがとーや、まあ、近くに椅子がある。少し座るか」

 「はい……早苗さん、大丈夫やろか?」

 「あの絶世ちゃんかあ。どうやろな?」

 「なんですか? 少し後ろ向きですね」

 「そうやな、美人薄命言うしな……ウソや、けどこれは知っておいた方がええ」

 「なんですか?」

 「絶世ちゃん倒れた時、陽性新型インフルエンザって口走ったやろ。あれな訳ありなんや」

 「……はい? 何ですか」

 「ウラな、市議会する前は、病院で医者しとった。そしてそれがここや」

 「え! 本当ですか!」

 「ウラはウソつかん! 儂が医者を辞めたんは、いろいろあってや。嫌になったんや。けどな、やっぱり根っこは医者なんやな。何かあったら、調べていたんや」

 「そうなんや」

 「そや、それでな、少し前に桜井と言う名字の名をここで見つけたんや。部外者になったとは言え、そこは昔の杵柄使ったんやて。そして、わかったんや」

 「……」

 「病名も知ったざ。そん時、新型インフルエンザやったことも。それに……絶世ちゃんを気になっていたことも」

 「え!」

 「驚くことはないざ。実はな、新型インフルエンザの県内患者第一号は、絶世ちゃんのお母さんやったんや。やったんやけど、実はその時に、ワクチンと予防のクスリがなかったんや」

 「え!」

 「県が後手ふんだんや。ウラは市議会の人間やたから、なんも言えんかったけど……悲劇が起きんように願っていた。願ってたんや! けど……宮本クンやったか? 新型インフルエンザには、ワクチンはない。しかしな、想いを届ければ治る……ウラはそう信じとるんや」

 「いきなり非科学的やな!」

 「そや、非科学的や……絶世ちゃんは、その非科学的に縋らなアカンのや。儂は悔しい」

 「……早苗さん」

 








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