表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
三途の川 再開 そして……
112/120

112

 《ワゴン車 福井の町中?》


 今年の冬は、暖かかっかったなあ。

 私、桜井 早苗は、家の……違う違う、お店のクルマで配達中なんやって!

 今日は朝から、お菓子創って、クルマに乗って、たくさん働いてるざ。

 あー、なんやろ。

 疲れたざ。

 福井の町の真ん中あたり、道はクルマがたくさん走っとる。

 私の運転しとるクルマは、信号待ちやって。

 やけに長い信号やなあ。

 赤から青に変わらんざ。

 たいくつや。

 ん? バックミラーを見ると、メイクの薄い私の顔がどこか冴えないざ。

 元々、冴えない顔が、今日はますます冴えないのう。

 やれやれ……

 ついでに身仕度を見る。

 いつもの店の冴えない法被に、デニム、スニーカー、いつもの冴えない服装やの。

 あれ? 財布とスマホが見当たらん。

 財布には運転免許が入ってるんやけど、コレじゃあ無免許運転やざ。

 どうしよう。

 スマホもないし……連絡つかんやんけ!

 まあついても、免許の入った財布を持ってきてくれるかは疑問やな。

 ん? なんやろ? 首からなんかぶら下げとる。

 ……交通安全のお守り? なんか少しゴツゴツしとるなあ。

 なんやろ?

 一応、戻しとこ。

 

 長い信号はまだ変わらん。

 クルマの中を見渡して見る。

 いつもの、雰囲気にいつもの空気や。

 ……あれ? お菓子がない!

 私、配達中なんやのに、お菓子がないざ。

 バカやな。

 私一番大事なモノを……


 「心配するな、早苗さんはしっかり配達しとるって」


 え? 誰?

 

 「足羽川河川敷……早苗さんを待ってます」


 足羽川河川敷で待っとる?

 ……足羽川河川敷って?

 なんやろ? 変な感覚やざ。

 ふと信号を見た。

 あっ、青に変わっとる。

 他のクルマに迷惑かけてもた!

 早よ、走らんと。

 けど警告音、一切せんかったざ。ひっとして、今変わったんやろか?

 

 《町中 ドライブ》


 福井の町を、私は走っとる。

 不思議なくらいに、走りやすいざ。

 私の知ってる福井人は、クルマの走りが雑なんや。

 危ない運転も平気でする。

 けど今日に限って、みんな大人しいざ。

 まあええわ。

 私がどうなったって。

 心配する家族、私なんか想う人、おらんのやで!

 ……おらん、の、か?

 私の家族……

 私の想う人……

 

 クルマは順調に、走っとる。

 空は青い。

 不思議なくらい、青いんや。

 青い……青い……

 なんやろ? 

 わからん……けど、クルマは今、足羽川河川敷を走っているんや。

 足羽川河川敷……確か……



 《足羽川河川敷 》


 クルマを降りると、町の音がする。

 いつもと変わらん町の音やって。

 けど、なんか変や。

 私は周りを見渡す。

 なんやろ? 

 町の音は、いつものとおり。

 一体何でや?


 「はしらのきーずーは、おととーしのー……」

 どこからか、歌声がしてきたざ。  

 私はその歌歌に、顔を向けたって。

 そこにはキレイな顔した男の人がいた。

 なんやろ? この人、どこかで会ったことあるざ。

 「早苗さん、よう来たの」

 男がニコッと笑たざ。

 なんやろ? ええ顔やざ。

 誰やろ? 誰や?

 私は頭を捻る。

 ……わからん、わからんざ!

 「早苗さん、俺を忘れたんか? まあ仕方ないか……俺、松浦 孝典やって」

 男が言うた。

 

 松浦……孝……典……


 え! 孝典さん!

 「ウソや、だって孝典さんは……」

 私は大声を、張り上げたって。

 孝典さんは、とっくに、おらん人やざ。

 アイツやないんや。

 ……アイツ? アイツって誰や?

 私は誰を、見とるんや?

 「早苗さん、迎えに来たんや」

 孝典さんが、静かにしっかりした口調で言うた。

 迎えに来た? 

 「早苗さん、やっと手に入れた。逃がさない!」

 孝典さんが、私を抱いた。

 力強い男の包容や。

 弱々しい、孝典さんではなかった。

 なんやろ? 嬉しいざ。けど、後ろめたいんや。

 何で?

 私、どうしたんや。

 孝典さんの包容を、私は外した。

 少し距離を置く。

 顔を上げて、孝典さんを見たんや。

 透き通った肌は私の知ってる孝典さんなんやけど、こんなに健康体やなかったって。

 弱々しかった。

 「早苗さん、俺は死んだ人間や」

 孝典さんが言うた。

 ……そうや、孝典さんは死んだ!

 病院でいきなり苦しみ出し……ううん、ちゃう! 体を患いそれが限界にきて、苦しみ出したんやった!

 その時、私は同じ病室でただ見ていてた。

 それだけやった。

 そう、孝典さんは死んだんや。

 …………!

 「なんで、死んだはずの人が居るんや?」

 私は大声を、出したんや。

 だって、そうやろ。

 私の前に健康な力強い、それでいてキレイな孝典さんがいるんやで。

 おかしいやろ!

 「……早苗さん、アナタは俺のモノや。そういう、運命なんや」

 「え?」

 なんや? 意味不明やざ。

 「早苗さん、アナタはもうすぐ死んやって」

 え? え?

 孝典さんが、ハッキリと言い放ったって。

 私、死ぬ……ん、か?

  


 

 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ