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はい、お菓子やざぁ  作者: クレヨン
二月 まだまだ寒い 
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 《駅前西口 対決中》


 副議長さんの話は長々続きそうやった。

 「はい、ありがとうございしたあ」

 「お、おい!」

 「さて次は大名閣さんに、今回出店された羊羹のご説明をしていただきましょう」

 アナンサーさんが、強引に止めたって。

 まあこれが、正解やな。

 けど……

 「はい、私の福井が誇る老舗であり、福井と言えば大名閣、大名閣と言えば福井、そんな我々の羊羹は……」

 なんや、尚更回りくどいざ。

 似とるって。

 ……なんやろ、体が熱い

 これは、どうしたんや?

 「早苗さん、どうしたん?」

 女将さんが私を心配しとる。

 どうやら顔に、出たようや。

 「大丈夫や、それよりも大名閣やって。何を並べたかを聞きましょう」

 私は女将さんに言ったんや。

 一人のエキストラさんに、こちらを渡しながら。

 女将さんも違うエキストラさんに、羊羹渡しながら頷いたざ。

 聞き耳たてながら、仕事や。

 「大名閣は今回にあたり、まず芋水羊羹、そして大名閣の水羊羹、そして最後はなんと、バレンタインデーのチョコレートに負けじとばかりに、チョコレートの水羊羹をご用意いたしました」

 オッサンが言うてる。

 やはり、やざ。

 大名閣はチョコ羊羹を出してきた。

 「やっぱりやの」

 「はい、女将さん」

 ある程度の手の内は、知っとった。

 だから驚きはない。

 芋水羊羹も、おそらくは……

 「芋はサツマイモ、福井が誇る、とみつ金時を使用致しました。サツマイモの甘さと豆の甘さが合う一品であります」

 「なるほど、どれ一口、私いただいてみまーす……なるほどサツマイモの甘さが豆の甘さを引き立てます」

 

 ふうん、なるほどやの。

 「スミマセン、こちらもください」

 「あっ、ごめんの」

 私は違うエキストラさんに、羊羹セットを渡す。

 !!!

 「あの……」

 「あっ、大丈夫です、大丈夫です。気にしないでや」

 私は言うたんや。

 今、身体に電気みたいなんが、走ったんやって。

 なんやろ?

 私まさか……身体に異変があるんか?

 …………アカンざ

 今は頑張らなカアンのや。

 私、緊張から身体が可笑しいんやないみたいやって。

 体調不良……なんや

 今頃わかったって。

 けど今頃わかっとも、今は辛抱やざ。

 さてと聞き耳を立てたる。

 「二つ目は、コレは私らの大名閣の羊羹やざ。言わずとしれた美味しい福井の味です」

 「これもいただきますね……うん、福井の味です」

 福井の味……なんやろ?

 誉めてないような……

 ん!

 少し足が痛い。

 ビリビリと痛みが、お尻に上がっていくんやって。

 

 けど……耐えろ! 桜井 早苗!

 

 自分に喝を入れたるざ!

 今は何としても、乗り切らなかあんのや。

 「三つ目は、今日を意識した羊羹で、チョコレート羊羹です。バレンタインデーにあやかるつもりはないんやけど、ここは羊羹とチョコレートを合わせてみよう考えましたんやって」

 「正直、ありきたりですね」

 「ありきたり……とにかく食べてみてや」

 「はい……なるほど、チョコレートの甘さに小豆の甘さが陰から応援しています。小豆を引き立て役にして、チョコレートが甘味を増しているみたいです」

 アナンサーさんが、言うたざ。

 チョコレートが前、小豆が後ろ、これはアカンざ。

 羊羹は……ううん小豆の甘さには、チョコレートのほろ苦い甘さは合わんのや。

 合わんから、どちらかを弱くしないといけない。

 つまりチョコレートの甘さと、小豆の甘さは……


 共存できん!


 だからチョコレートを多くして、小豆の甘さを控えたんやろう。

 けどそれは失敗やと思うざ。

 篠原……あんたの苦労が、なんかわかるざ。

 ここに来んかったんも、納得してないからや。

 納得してないんやけど、あのオッサンが力づくで出したんやろな。

 

 これでええ!


 こんな感じてやざ。

 「最後に皆様に言いたいことを、アピールしてください」

 「はい、私ら大名閣は地元福井を愛し、それでいてチョコレートみたいな洋菓子の良さを取り入れる。羊羹は何でも取り入れて我々にいろいろな姿を見せてくれます。これが、福井の水羊羹であります。大名閣はこれからも、水羊羹と共に福井の皆さんに愛される店を目指していきます」

 ……オイオイ、文法大丈夫かあ?

 それに……

 「店の宣伝しとる。変なざ」

 女将さんが言うたって。

 確かにや。

 私と女将さんは、笑いをこらえとる。

 「大名閣さん、ありがとうごさいました。それでは反対側の高塚屋さんと さくらいさんに、説明を……っあ、CMですか。わかりました、それではCMが終わり次第に、高塚屋さんと さくらいさんにお聞きします。一旦CMでーす」

 アナンサーさんが、言うたざ。

 さて、今度は私らか。

 よし、がんばるざ!

 ……身体が熱い、お願いやもっての!

 もっての、私の身体!

 

 


 


 


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