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「はい、こちら駅前西口です」
「いつのまにか、たくさんの人、人、人が羊羹対決の後押しをしておりまーす」
「どっから、わいたん?」
「さあ?」
白々しいの。
確かにサクラやとは言えんけど……
一応、エキストラで通すの。
「羊羹のセットお願いします」
エキストラの一人が、言ったんや。
私はそれを渡す。
エキストラさんが少し離れる。
私はその人を追って見とるんや。
反応はどんなんや?
まずバナナから……
ヨモギ……
最後に大甘羊羹
……あっ! 反応がええ、そう思うざ
「あのー、いいですかあ」
あっ、違うエキストラさんが来たって。
私はまた一つ渡す。
そしてその後に、女将さんに小声で言ったざ。
「なかなか、反応よさそうです」
女将さんも、笑って頷いてる。
「およそ千人の駅前西口利用者様に、協力いただき会場は割れんばかりの熱気に包まれています」
「千人ですか!」
え! 私もびっくりやざ。
人気がさっきまで全くなかったのに、本当にどうやって隠したんや?
「そう言われて見れば、福井西口商店街の活気がすごかったような気はしたざ。それに町中通りもやざ」
女将さんが言うたざ。
そうなんや、私はようわかんかった。
だけどすごい人やの。
一体誰が呼んだんやろ?
テレビ局や言うたけど、それだけなんやろか?
「では利用者様の一人に、インタビューをしてみます。こんばんは、いいですか?」
アナンサーの一人が、どっかのオッサンに……ん!
あれは!
「はい、いいですよ」
「羊羹、どうですか?」
「美味い! 福井の味やの」
あのオッサン、副議長さんやざ。
私は女将さんに耳打ちしたって。
「……つまり」
「はい、これ仕組んだんは……」
そこまで言ったら私、すっごく頭痛くなったんやって。
なんやろ、締め付けられるようなんや。
副議長さんの企みに、頭が痛いんやろか?
なんやろ? ようわからんわ。
ただ副議長さんが自慢気に、なんか喋っとる。
「羊羹は福井の味やで、慎重に審査しますざ。それにしても、二つの組の羊羹、おもしろいのう」
なんか宣伝しとるみたいやざ。
あのオッサンに、頭痛いんやな。
ここまできたら、たっぷり宣伝しての。