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スタッフさんが、スタートのサインをしたざ。
「福井の皆さん、こんばんはー! 今日も始まりました。夕方ただいま福井、今回は福井西口からの放送でーす」
「昨日は市民会館、その前はアオウザ、二月の天候悪い時期に何故か出張放送ばかりの、夕方ただいま福井が始まりましたあ」
「余計です」
二人の男女のアナンサーが、皮肉まじりに始まったなあ。
ウケ狙いとは言え……
「今年の冬も、寒いですね。二月入って雪は一段落ついてはきましたが、今日も曇り空のモヤッとした一日でした」
「そんな日ではありますが、今日はなんと言っても……水羊羹の日でーす」
「あれ? バレンタインデーでは? 女性からチョコレートを貰えるんじゃあないですかぁ?」
「いくつ貰えましたぁ」
「……あっ、そうでした。今日は羊羹フェアーの一つとしまして、水羊羹対決を放送させていただくんでしたあ」
おいおい、なんつう前振りなんや。
私はおろか、女将さん、大名閣の社長と従業員みたいなお姉さんが、苦笑いしとるざ。
……アイツは、おらんのやな
準備の時も、おらんかったし……
アイデアは出したけど、テレビにはこんのやなあ。
「さて、日の入りはだいぶ遅なって来ましたが、やはりまだまだ夜は早い。こんな時間に羊羹対決なんて和菓子さんも大変やあ」
「あのねえ……やめやめ、さて今回の放送は羊羹対決と題を打ちまして、福井駅西口より特設会場にて、皆様のお茶の間におじゃましています。今から対決をする二つの……チーム? あっ、ごめんなさい和菓子屋さんを紹介したいと思います」
「バレンタインに、水羊羹……さすが福井ですなあ。お茶の間まで残ってるとは」
「苦情はコイツの事故責任ですから、後から携帯番号教えますから」
「……いつの間に、番号知る仲になったんかなあ」
「はい、ここでスタジオから、全国ニュースをお伝え致します。報道フロアの……」
「話かえんなや!」
ここで一旦、画面がテレビ局に返されたんやけど……紹介蹴飛ばしたざあ
この番組、大丈夫なんかあ?