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午後8時半、和室で吸血鬼討伐の為の作戦会議が始まった。
……といってもほとんど考えるのは俺だが。
大まかな作戦内容はペンペンが説明してくれたらしく、俺は詳しい集合場所、吸血鬼に突然襲われた時の対処法など、作戦を成功させる為の細かい事を説明するらしい。
「明日の作戦の細かい事を説明するぞ。一応言っておくが今回の作戦の要はペンペンだ、よく聞いとけよ」
ペン!とペンペンのいい返事が聞こえた。
テラーヌ街は元々、広く長い海岸の上で発展した街だ。その為街自体が南北に伸びており、区切るならロールケーキを切るように区切る方が断然効率がいい。というか、この街の区の分け方も東西に分けられている。
「配置は南寝蔵区にツバサ、中南文化区にルーサス、中北港区に俺、北海緑区にマミだ」
「北海緑区ってセレブの集う区だよね!テットのくせにやるじゃん」
そういうつもりで配置したわけでは無いのだが、喜んでるならいいか……。
この街は東端に住宅が多くある南寝蔵区、少し北に行って、娯楽施設、ショッピングモールが多くあり、駅がある中南文化区、そのまた北が、この街の栄えた理由である港がある中北港区、そして唯一海水浴場があったり、ホテルがあったりと、リゾート地として栄える北海緑区と、計4つの区に分かれている。
ちなみに今いる、お姉さんの家は南寝蔵区だ。
北海緑区はマミの言う通り、セレブの多くいる街なので当然地価が高い。ここに住めるのは超セレブだけ。
「ペンペンには中南文化区にある高層商売ビル『SIDO』と、北海緑区にある高級ホテル『Lucky』の屋上を瞬間移動で往復してもらう」
この2つの建物から見える夜景を合わせれば
テラーヌ街の大体は余裕で見渡せる。
そして、今なら吸血鬼騒動で会社関係の建物にはあまり人はいないだろうから無断侵入にはならないだろう。
「もし吸血鬼がいたら敵の見えない所でペンペンが見える程度の目印を建ててくれ。建てるものは後でペンペンに伝えとけよ」
俺は自分のバックからある物を出した。
そう、GPS機能を搭載した腕輪である。ツバサに結構前に作ってもらった腕輪に、GPSを付けたものだ。
グループ長に携帯の代わりにこれでも持ってけと渡されたものだ。
別にこの腕輪をつけたからといって防御力が上がるわけではない。
「そしてこれを全員につけてもらう。ペンペンは個々の腕輪がどこにあるか分かる、このタブレット端末を持っていてくれ。くれぐれも落としたりして壊すなよ」
タブレットはお姉さんが貸してくれた。
朝まで見回りをしている可能性が高いし、明日は遅くまで寝て、見回り中に眠気が来ないようにしたほうがいいだろう。