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野宿なんて現代っ子のすることじゃない。改1

「よし、これでいいか」


「この夜空を見て夜を過ごすのは一体何度目だろうな…なぁに馬鹿なこと言ってんだ俺は。俺はこの大地に生まれし忌み嫌われている人間…何度目だなんて笑えるぜ」



俺は立て終わったテントを満足そうに見ているデップを遠目から見つめて、ため息をついた。理由は言わなくても分かると思うが野宿についてだ。


俺はここに来てから(まだ2日目だが)、野宿しかしていない。

夜になればここら辺は冷えるし、布団がないから寝床固いし。


寝起きなんて腰が痛すぎて最悪ったらありゃしない…

昨日、今日の2日目で、まだ治りきっていない腰の痛みが悲鳴をあげていた。

正直そろそろ我が家の布団たちが恋しくなってきたな。


そんな俺の気持ちを知る由もないデップは大きな図体を収めるにはいささか足りないのではないかと思うテントの中に入っていった。

もちろんあのテントの中はもう定員オーバーだ。


俺の寝床?心配しなくても夜の見張り時間の交代が来ればあのテントは俺の寝床になるのである。


今はもう屋根があるだけましと思うしかないため、テントも楽園である。



「はぁ…」



俺はパチパチと燃え盛る焚き火を見て深いため息を1つ、吐く。


最初に、この見張りの話をされたときは夜にモンスターが襲ってくるとかアニメの中の話じゃあるまいし、と高を括っていた。


しかし俺は忘れていたのだ、ここは〝アニメの世界〟だってことを。


まさかアニメ世界来日初夜にいきなり襲ってくるなんて思わないだろう。嬉しい歓迎の仕方だったよ。これも俺の霊力の大きさが招いてしまった悲劇なのだろうか。


ふっ…強すぎる力とは時に罪深いな。



「しかし寒いな、この格好」



俺は冷えてきた手のひらを弱くなってきた火の方へ向ける。

今の俺の格好はというとスウェットだ。ひとことで言い表せるような服装だ。


なぜこの格好かって?おいおい、そんなことも理解できないのか?仕方ない、その足りない脳みそによく刻み込むがいい!そう、俺はあの日に転移した時のままの服装なのだ!


デップ曰く「人里に服屋があるはず」だそうだ。

ついでに「そこでその奇妙な服装をどうにかすればいい」とも言われたな。


世の中のスウェット民を全て敵に回した瞬間だな。

現代なら盛大なバッシングを受けていただろう。情報化社会恐ろしい。



「タナカ、交代だ」


「そうか、月が満ちたか」



いつの間にか月の位置が随分と高くなってきたとき、デップが起きてきた。


俺は時とは早いものだな、と言いつつ立ち上がる。

やっと睡眠がとれるのだから早く寝たい。


きっと明日も早くに起きることになるだろうから、少しでも多くの睡眠をとりたいのだ。



「ところでタナカ」



デップは何かを思い出したのか、テントの方へ歩を進めようとしていた俺を引き止めた。


ちなみに言うが、俺たちの自己紹介は出会った時に軽く終わらせてある。


俺がデップの名前を知っていたことは偶然たまたま知り合いの名前と同じだったという言い訳でなんとかなり、俺の名前は田中博雪と伝えたらタナカと呼ばれるようになった…ただそれだけだ。



「昨日名前と一緒に聞くのを忘れていたが、お前なぜあんなモンスターの巣窟にいたんだ?まぁウィークだったから良かったが」



これも昨日いろいろ聞いて知ったことなのだが、ここのモンスターにもランク的なものがあるらしい。


モンスターの上にも何かしらいるが、説明するのが面倒くさいからこの辺で切っておく。とデップに言われたため俺にも説明はできない。


そして悲しいことに俺が最初に出会ったものはモンスターの中でも最弱らしい。あんなにデカいのに、だ。強さの設定基準絶対間違っていると思う、この世界。


そう、地面に腰を下ろしつつ聞いてきたデップに俺はさっさと話を切り上げて寝たいという欲望しか脳内に存在していないため、この自分の今の説明しがたい状況をどうにか誤魔化そうと考えた。そのせいで変な間が生まれる。



「それは俺がそこで天より命を授かったがためだ」


「あそこで生まれたのか!もしやお前もあいつらの仲間なのか!」



そして変な誤解を生んだ。俺は今にも手に持つ大剣を振り下ろそうとするデップに必死に首を振った。


それで少し考えた後、剣は鞘に納めてくれはしたが、まだ少々俺に対して疑いの眼差しを向けていた。転移してきたこと言って信じてくれるかなんて分からないから弁解はしない。



「因みにだがデップは、なぜ旅を?」


「…お前には関係のないことだ」



アニメでそこのところの設定が説明されていなかったために、俺は気になっていたことを聞いてしまったわけだが、まさかの関係ないと一括されるという事態。


まぁ俺も詳しいこと話そうとしていないのだからお互いさまと言えばお互いさまになる。だから俺たちはそれ以上の追求はせず、ただ黙ってテントに戻るのだった。


よし寝よう。俺は横になりそのまま眠りに落ちた。

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