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仲間は友達みたいな感じで。

前回のあらすじ



アニメ内のデップには仲間がいなかった!

▽デップに危機が訪れた!

→アニメ通りボッチになる

→無理やり仲間を見つける










「あの、」



 暑苦しい日差しを避けた木々の下で、少女はゆっくりと口を開く。適当な言い合いをしていた俺とデップも少女の呼びかけによって口を閉ざした。



「魚、おいしかった…です」



 座ったままペコリと頭を下げた少女は、目をきょろきょろと泳がせながら改めて感謝の気持ちを述べる。そんな姿も美しい可愛い少女の紺碧色(こんぺきいろ)の瞳には不安な色も見え隠れしているように思えた。


 俺が感じただけであって、本当にそうなのかは分からないけど。



「あぁ、気にするな、この先のブルータウン、」


「俺の名前は田中博雪、そしてこの巨神兵はデップだ!貴様にも名乗る時間をやろう!」



 そしてまたもや新キャラゲットのチャンスを逃そうとしたデップを無理に遮る。いわば、キャラがチャ引くために貯めてたダイヤ的なあれをすべてデリートしようとした不届き者を止めた感じである。


 その為かデップの表情が若干どころではなく険しいが、それは俺様のスルースキルを発動することによって無効と化すのだ。


 自己紹介までもってきて、あわよくばパーティーに入ってくれるように頼もうという魂胆の俺は全国の男性読者諸君のために全力で頑張ろうと思います。



「………それで、なんの話、だっけ?」




静寂のワールドなぁう。


………うん、さすがにこの一瞬でなんの話をしていたか忘れるとかやばいよ。


 俺とデップの一瞬のにらみ合い(という名の冷戦)の間、キミに一体何が起こったっていうんだい!俺には何も分からないよ!ガール!!


パチパチと目を瞬かせ、本当に何も覚えていないかのような態度をとる少女に俺は困惑しかできないため、デップに助けを求めるようと改めて視線を隣の巨大な我がパーティーメンバーへとスライドさせた。



「自己紹介をする必要はあるのか?」


これ以上、面倒なやつが増えるのはごめんだと言わんばかりの視線が俺に注がれる。


 なんだ?面倒なやつは俺一人で十分ってか。

………まって自分で言ってて辛くなってきた。


 最初のデップはこんなに初対面の人間に冷たくはなかったと思うぞ、暴力にものを言わせていた記憶しかないけど。


 頼もしい一面も多かったし、暴力にものを言わせていた記憶しかないけど。


 ………うん、こいつ全然優しくなんてなかったわ。



「デップはとりあえず口にスライムでも突っ込んで黙っているがいい」



 鋭く光る眼光に俺は後で殴られることを察した。


 すぐに殴らないのはきっと少女が目の前にいるからだ、だってそうだろ?超絶かわいい少女が目の前にいたら男なら誰でもいい格好したいに決まっている、そうに違いない(※デップは乙女)


 俺は改めて少女に向き直り、その輝かしさのあまり目を反らしてしまいそうな程の顔面を前にして視線をキョロキョロとさせた。


 美しい可愛い少女に飢えすぎていた俺にこれは拷問だぜぇ。



「改めて問おう……きゅ、貴様、名は何というっ」



 ―――噛んだ、ごめん。



「名前?わしの名前、聞いているの?」


「YES」


「いえす?」


「あ、通じない」


「なに?」


「とりあえず名前を」


「名前?誰の?」


「美しい瞳のキミさ」


「それって、わし?」


「他の誰がいるってんだ、いるのはそこの巨神兵くらいだから、ところで名前は?」


「名前?なにが?」



 ………。

 ……………。

 ……………………………………。




 ―――なんでっ!!?




 話が進まな過ぎてどうしよう!!ワンクッション何かを挟むたびに記憶消えているんだけど!大丈夫なのか、この子!というか思っていたよりも面倒くさそうなキャラに当たっちゃった感が否めないんだが!


 これにはさすがのデップも驚いたのか、少女を凝視したまま固まっていた。


 仕方がない、こんなん驚かないほうがおかしい。


 俺はこみ上げる何かを抑えるようにしてもう一度少女に問いかける。



「お前の名前を教えてください」


「わしの名前?………フォリア、確かそう呼ばれていた気がする」


「気がする?」


「記憶に靄がかかったみたい」



 宙を見つめ、しばらく考えてから発せられた名前。

 

 そしてそれ以上のことは何も分からない、そう言った少女の瞳は戸惑いに揺れていた。だからきっと少女、フォリアの言うことは嘘ではないのだろう。


自分が倒れていた理由も、自分が何者なのかも、何もかも知らなくて。かろうじて残っていた記憶の断片で名前らしきものだけが分かって。


 恐らく不安に違いない。


 俺は今までの(アニメ視聴の)経験から、この記憶消失系少女はきっとこれから苦労していくのだろうと察した。これは逃れることのできない現実である。実はつらい過去を持った貴族の少女で、殺された家族のことを思い、悩んでいたがある日プツリと記憶が途切れて―――



「まぁ、いっか」


「え」


「なんか、いつものことって気がしてきたし」


「待って軽い」


「ところで今なにしていたんだっけ」



 そう言えば、ついさっきまでこんな感じでしたね。


 この少女の未来を憂いていた心優しき俺よ、今悪魔へと姿を変えるときである。



「タナカ、俺はどうすればいい」


「俺に聞くな、感じろ」



 取り敢えず対処に困りつつも、記憶喪失(仮)の少女をそのままここに捨て置くことは人道的にできないため、俺たちは一緒に次の街まで行くことに決めた。


 そしてフォリアはあの調子で軽く同行をOKして、俺たちは無事新しい仲間を手に入れることができたのだった。




 いや、なんか違う気がする。仲間ってこんな感じで増えるものじゃないよね?

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