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鎧の重さは、俺の背負うものの大きさ。

※この話から少々、地の文章の書き方と言うか形が変わります。

 これまでの話に一切影響はありませんが、ただ文章を書く上でせめて基本だ

 けでもと思い今回から変更していこうと決めました。前話も徐々に変えてい

 きますので、よろしくお願い致します。















 さてさてさて。これはどうしたものか。


 俺は目の前に広がる険しい砂利道を見つめてため息をついた、後ろに迫る危機に諦めをつけながら――


 それはブルータウンを出発するところまで遡る。






「……重い」


「気合いが足りないんじゃないか?」



 ブルータウンの入り口付近、ここに来た時に使った入口とは逆方向に位置する入口だ。

 

 俺は自身の身長が徐々に縮んでいっているような感覚に陥りながら目の前で首をかしげるデップ(女)を恨めしそうに見つめた。


 気合いでどうにかなる問題でもないだろ、これ。

身体に圧し掛かる鎧の重さは現代を生きる俺にはキツイぞ。


 前回さんざんスウェットのままでいいと主張していた俺だが「これを着たら強くなるぞ」という言葉につられて自らこの状況を作り出しているわけだ。



「そうだ、いい機会だし力でもつけるか」


「は?」


「ここを出て更に南に行くと大きな国があるらしくって、そこのクラースナヤストリートは戦闘値を上げるにはいい場所だと聞く」


「いや、」


「そこでお前の戦闘力を上げるとしよう」




 決意を固めたデップはさっそく、どの方向だったかと周りを見渡す。

多分、地図の内容でも思い出しているのだろう。まぁ周りが木々ばかりで、もはや森以外何者でもないような光景しか広がっていないのに何を目印に歩けばいいのやらって感じだが。


 ちなみに今いるところはブルータウンを出てすぐの森の入り口前。そして俺たちの手元に地図はない。理由としては前の話を読み返せば分かることだが、簡潔に言うと俺が地図を黄泉(よみ)の彼方へ送ってしまった(紛失した)ことが要因だ。


 だからと言ってそこまで俺に罰を与えることもないだろ。なんだよ、戦闘力を上げるって。俺もうマックス値じゃん、これ以上強くなる必要ないじゃん。ていうか人の話聞けよ、このデカデップ略してデップ。



「それにしても遅いな、お前」


「ふっ、貴様とは背負うものの重さが違う」


「一番軽めの装備にしたんだがな」


「ばっ、貴様ぁ…!」



 そう言いながらヒョイと、俺を軽々しく持ち上げるデップ。

高いたかぁい!みたいな持ち方。周りには誰もいないし、木ばっかりだけど俺にだって羞恥心もあるし!



「やっぱり軽いな、軽すぎる」


「持ち上げるなー!」


「子供か、お前は。取りあえずこのまま進むか」



 暴れる俺を飽きれつつも、下ろす。

そしていくつかに分かれている道を進まず道なき道を選択し足を進め始めた。


 毎度のことだが、デップはせっかく作られた道を進んだことがない。

谷やら山やらを越えるのが大好きなのかは知らないが今の俺の格好を考えてほしい。今回くらいまともな道を進みませんか?と言ってやりたいが今は言葉を発する元気もない。


 すごいだろ?これ、ブルータウンを出てからまだ10分くらいの話だぜ?

おかしいな、俺って体力には自信があるって一話で言ってなかったっけ。


 そして俺たちはそのまま1時間くらい歩き続けた。道なき道と言うものは本当に体力を奪っていくもので、俺は汗をダラダラ流しながら歩を進める。もちろんデップは涼しそうだ。まるで同じ人間じゃないようだ…そうか、人間ではないのだあいつは。


 そんな阿呆なことを考えながら歩いていると、デップが急に立ち止まった。



「ぐへっ…って急に止まるなよ」


「静かにしろ、くるぞ」


「は?俺の波動が?」



 そう言った瞬間、妙に静まり返っていた森の中に小さな地響き起こる。

それは今まで聞いたものに比べると、比にならないくらい弱いものだったが、デップの顔は今までにないくらい険しい。


 またモンスターかよ、と思った。知らないだろうが、俺はほぼ毎日モンスターと対峙していたからな、正直なところもう慣れていた。前もこんな余裕をかまして危ない目に遭っていた気がするが気のせいだろう。


 しかし、やっぱり俺は阿呆だったらしい。

 

 突如地面から現れたのはデップと同じか少し大きいくらいのモンスターだ。

ホントにいつも以上に小型なモンスターだな。2ⅿくらいだが、動きがかなり速いようだ。



「馬鹿!さっさとそこから!」


「え、」



 モグラか?と思っていた俺の頭上には既に敵はいて、しかし自慢の反射神経でなんとか避けようと思ったところまではよかった。さすが俺とか思っていた。あ、身体が重い。そんな事実に俺が気づいた時にはもう逃げられる距離ではなかった。


 大きな音と、身体に突き刺さる石ころの痛み。そしてクルクルと回る世界。

抱きしめられるその感覚は何度か経験したものと全く同じだ。


 俺の視界にはゆっくりと倒れていく2、3本の木々が映っていた。



「ほんっと、お前と言うやつは…」


「デップ、」


「早く先に行け」


「は?」


「お前がいると上手く戦えん、さっさと先に行け。この先に道があるはずだ」



 しばらくジッとしていると、土煙は収まりデップも俺を離した。

デップに抱きしめられていた上に甲冑を装備していた俺は勢いよく地面を転がっていたのが嘘のように無傷である。


 鉄の鎧が俺の肘とかに激突したりなどの軽い打撲的負傷はいくつもあるが。

それも数えるくらい。しかしデップは既に傷だらけで、敵は無傷の状態。この敵に果たしてデップは勝てるのだろうか?そんな疑問も過った。


 今まで考えたことないけどデップって負けたりするのか?

一応、主人公的位置にいるはずだから死ぬことなんてないと思っていたが。


 空が曇り始めていた。

俺に背を向け、敵を見据えるデップ。



「山頂で会おう」



 そう言ってデップは走り出した。そして俺も走り出した。








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