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タナカとデップ。(改1)

「ふっ…俺とわかっての所業か、悪しきモンスターよ!くらえ!神聖なる守り神!ゴットシールド!」



あたり一面を埋め尽くすような騒音と風が耳を通り抜けていく。モンスターの腕が大きく振り下ろされ、その衝動で強い風が起きているのだろう。



「あ、死ぬ」



俺はモノホンのモンスターに対してちょっと調子に乗りすぎたかなと若干の走馬灯を見つつ反省していた。


しかしそんな間に来るはずの大きな衝撃は暫くしても来ることはない。


ちなみに俺は、目を閉じ頭を抱えて地べたリアンしているため今の現状がわからない状態である。


何が起こった。

しかし顔を上げる勇気もないぜ。


そう思った瞬間に鈍器で殴られたかのような音の衝撃が走った。


その衝動で俺は吹き飛ばされ、思いっきり地面に体を打ち付けてしまう。


人形のように無抵抗に地面を転がった俺の体はかすり傷だらけだ。


しかも1回や2回の傷の量ではないのだから痛々しさはかなりのものだろう。


俺の着ているスウェットも泥だらけだ。

着替えがないのだから勘弁してほしい。



「ってー…なん、だと」



俺もずっと地面とこんにちはしている訳にはいかないため、節々が痛む身体にむち打ちゆるりと立ち上がってから後ろを振り返ればそこには驚く光景があった。



「死んでる、のか?」



そこには先程まで強烈かつ強烈な雄叫びを上げて暴れていたデッカモンスターが倒れていた。


死んでいる。

もう動かない。


ここまで静かだととても気味が悪いし、また襲ってくるのではないかと不安が押し寄せてくる。


しかしここで吐き気を催さないのは、割りきって考えてしまうのはきっと慣れなのだと思う。



「ふっ、嫌な慣れがあるものだな」



まぁ、とりあえず一見落着というやつだな。

いやね?ここまでの経緯を話すとだな?


優雅にお散歩してたらまさかの魔物的な敵的な、まさに敵です!オーラ全開のモンスターに出会ってしまったのだ。


さすがの俺様も驚愕ものだったぜ。

大きさはどれくらいだったかな。

3mは絶対あったな。



「ピンチの状態でも敵の情報集めをする…俺様も手馴れてきたものだな」



俺はゆっくりと歩き出し、首を縦に振りながら満足そうに笑みを浮かべる。心なしかニヤニヤしている気もしているが気にしたらいけない。


だってここには知り合いなんて"いない"のだから。キモイだのキショいだのキモいだの言ううるさい奴は誰もいないのだ。


表現の自由とはこう言うことだな。



「しかもほぼ無傷…はっ!?もしかして俺様に秘められし魔力がついに開花してしまったのか!」


「馬鹿なのか、お前は」


「イッッ!な、にすんだよ!!」



歓喜、まさにそれだった俺の頭を思いっきり誰かが殴った。


あまりの手加減のない攻撃に若干涙目になりながら振り返ればそこにはまさに鬼のような大男が一人。


そいつは手に持っていた大剣を自らの背中にある鞘の中へと収めた。



「何すんだ、じゃねぇだろ。何だ秘められし魔力って、そんなわけないだろ」



大きな図体に、筋肉で埋め尽くされたような体。いい感じに日に焼けたその恐ろしい体のために存在するかのような鋭い目つきの強面の顔。まさに鬼のような存在感。


小学生と対面させたら絶対今頃刑務所の中で飯食ってるよ、というかもう刑務所ぶっ潰すだろうなこいつ。



「ならば聞こう、何故俺の目の前にこのモンスターが倒れているのだ?答えは1つ、俺が」


「俺が倒したからに決まってるだろうが」



被せるようにして放たれた言葉に空気が固まる音がした。そして同時に俺の膝は地面にゴッツンコ☆した。


まさか俺はまた勘違いをしてしまったというのか。なんてことだ、やっと希望が見えてきたと思っていたのに。見知らぬ土地へ来てやっと!またそうやって俺を絶望の淵へと追いやるんだろ神様、俺の小さな喜びを返してくれ。こんないたいけな少年を騙して何が楽しいんだ!世の中腐ってやがる!!



「タナカ、いい加減一人で歩くなら周りをよく見ろ、何度死にかけてるんだ」


「貴様、何度言えばわかるんだ!しっかりその胸に刻めと言っただろう!33回目だ!」


「そんな威張られても困る」



絶望の淵へ追いやられていた俺の背後でため息をつきながら言うこいつに俺は顔だけを上げてドヤ顔をして見せた。


それを見てさらにため息を深くつ。

俺は遠くを見つめた。


俺だって好きで33回も死にかけているわけじゃない。そして好きでこうやって毎回デップに助けられては絶望してるわけじゃない。


あ、今ので34回目と記録を更新したわけだけど、でも〝ここに来て〟まだ2日目なのに34回も死にかけてるってすごくね?ある意味ギネスに載れるよ、俺。



「うむ、危機的自体だ」


「どうした」


「俺はもしかして、まだ力が開放されていないのか?」


「力も何も、お前はただひたすら弱いぞ、大丈夫だ」


「そんなに弱いのか!?てかそれ大丈夫なの!?おい!無視するのはよさないか…!」



ついには地面に手のひらまでつけて絶望していた俺にこいつは、とりあえず今日はここにテントを立てるからと言ってテントを組み立て始めた。


そう言えば紹介がまだだったな。

俺様の名前は田中博雪。

そしてあまりにも冷たいこいつはデップ。


そんな俺達はこんばんはここに泊まるそうだ。

俺の頬を一粒の涙が伝ったのだった。


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