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5・二人仲良く

 結局、僕と美鈴は二人リビングでごろんと横になりシードルのロングインタビューを読んでいる。

「うー……みゅ」

 美鈴がうなり声をあげている。

「どうしたのさ」

 目線は紙面に向けたままで、僕は美鈴に尋ねる。

「どんだけ文字数多いんだ……。疲れる……」

「そりゃそうでしょうよ。辛いんなら休めば?」

 僕がこともなげにそう言うと、

「バカ言え! これを楽しみに今日は雨の中ランニング頑張ってんだぞあたしは!」

 と怒鳴られた。いや、それは美鈴の都合じゃん。

「……けど、ちょっと、眠いぞ……」

「おやすみー」

 僕の合いの手を聞いた瞬間、

「バカたれ!」

 思い切りチョップが飛んできた。脳天を叩き付けられる感覚にしばらく悶絶する。僕は体も大きくはなく、体力もきっと美鈴に劣るだろう。もしかしたら本当に喧嘩しても勝てないかもしれないとか、思ったりもする。

「ひっどいなー」

「お前が気の利かんことを言うからだ」

 えー。と思いながら、でもそれを口には出さずに僕は頭を押さえながら一足先に座り込んでいた美鈴と姿勢を揃えて、向き合ってみた。

「なんかさ、幼稚園の時みたいだ。絵本を読んでるときとか、こんな感じだったね」

 そう言ってみた。単純に懐かしかった。

「そうだな。確かに、そうだった。懐かしいなー」

 美鈴もどうやら僕と同じ感想を持ったようだった。

「それで、僕はやっぱり読むスピードが美鈴より速かったから」

「ちょいまて」

 美鈴が待ったをかける。ん? どしたの? という顔で美鈴を見ると、少し美鈴は僕を睨みつけて、

「今お前自慢しただろ」

 と指摘してくる。

「いやいや。事実を述べたまで」

「お前むかつくな。自慢なんてする奴はもてないぞ」

「えー」

「えー、じゃないわ! 自慢なんかすんなむかつくんじゃボケ!」

 口が悪いのは相変わらずだなぁ……とか思いながら、僕は続ける。

「じゃあ美鈴はどこまで読んだ?」

「んー、ここ」

 指で示された場所は真ん中には届かず、ようやっと最初のページの最下段に辿り着けたかな、くらいのポイント。

「そういう和真はどうなんだ?」 

 と、美鈴に聞かれたので、僕は正直に答えた。最初のページの三段落中の二段落目。

「お前あれだけ自慢しておいてあたしよりも前じゃないか! バーカバーカ!」

「ただし二週目、ね」

「ばー……は?」

「美鈴がそこまで行くまでに、僕は一回全部読んで、そして美鈴を急かす事無くもう一回最初から読み直していたんだよ」

「…………」

 美鈴が俯き、少し顔や体が震えている。あれ? と思いそれを覗き込むと……、

「ざっけんなーーー!」

 叫び声が聞こえたかと思った瞬間に、アゴに強烈な一発を受けてしまった。……ねぇ、これって、僕だけが悪いのかな?

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