三・シードル
――なるほど。そうやって瑞穂さんはシードルに加入する事になった、という訳なんですね。
「そうですね。ガーゴン姫、爆誕! みたいな?」
――爆誕ですか(笑)。それでも瑞穂さんは楽器に関しては当時素人だったということで、色々苦労したんじゃないですか?
「ええ。まず素人と一緒にやってられっかとか言いながら敬一郎が三日、絵梨に至っては一週間部活に来なくなりました」
――あらま。
「そりゃあ別段真面目に大会だとか目指してやってた訳でもないですし、そんなん知るか、っていう気持ちにもなるでしょうね。どっちかっていうと瑞穂に対してじゃなくて、先生への不満って感じ」
――なるほど。それに対してリーダーの隆さんは何か働きかけを?
「いいえ。まず俺は当時リーダーじゃなかったですし」
――リーダーではなかったんですか!
「そんな驚かんでも。リーダーみたいな堅苦しいものとか俺嫌ですし。あいつらも嫌だったんですよ。そもそもリーダーってのも、大会出場するのにあたって代表者、みたいなのが必要だっただけで、俺は瑞穂に押し付ける気満々でした(笑)。何せ年長者だし」
――それで瑞穂さんはリーダーに?
「なってくれてたら今俺リーダーとかなってないし」
――断られたんですね(笑)。
「説教まで食らいましたよ。理不尽でしょ? 世の中って。中心は隆君なんだからしっかりしなさい! って、それでも渋ったら、年上の言う事を聞きなさい! とピシャリ」
――そこで年上の笠を着てくる訳ですね。なるほど。では本題に戻りましょうか。
「そうですね。先生が俺と瑞穂には指示を出していたんですよ。二人は二人で練習をする方が大事だから、ってね。それで俺はあえて動かなかった」
――なるほど、先生が二人の説得に当たった、ということなんですね。
「敬一郎についてはそうだと思います。三日で戻って来て、すぐにベースをいじりだして。何をそんな熱心にって思うくらい。しょうがねぇだろ。あんなん焚き付けられたら、何て言ってましたけど」
――どんな焚き付けがあったのか?
「詳しくは知らないです。けど、あれですね、さっき話した、『学校のお荷物』っていうのが効いているんだと思います」
――あぁ、そういえば。
「一回たまり場を教師に破壊されたことがあって。それに抵抗する内に俺が喘息発作起こしたんですよ。その時にね、つい本音が出ちゃったんでしょう」
――学校のお荷物、と?
「えぇ。当時結構有名進学校にバンバン合格者出している学校でしたからね、宮ノ訪中は。部活で活躍するでもなく、こちとら成績もハンパじゃなくダメな奴らばっかりで。そりゃタバコだ酒だ喧嘩だってことをやる訳じゃなかったけど、俺達三人は立派な不良ってことで通ってましたよ」
――けれども隆さんは成績上位にいたという話も聞きますよ。
「真面目にやれば、ね。俺は今もそうだけどギター、というか音楽関係以外真面目にやる気がなかったし」
――なるほど。それが当時から大会荒らしとして名を馳せていたギターの実力を生んだ、と。
「名を馳せていた、んだろうか?(笑)」




