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Run away! 2

校章と休日。

作者: 貴幸

校章無くしたのに友達が「あ、これお前のだよそういえば」って言ってブレザーのポケットから出してきた事があります。

何故友達は僕の校章持ってたのか謎です。

謎すぎです。









休日。

学校の講習帰りだ。


私は一軒家のインターホンを押した。


ピンポンとなる。


しかし応答はない。



「まだ寝てたりするのかな。」



ユウトならまだしもハルトの部屋にのこのこと入るのは勇気がいる。



「いや、行こう!」



開けようとドアノブに手をかけた瞬間ドアはあいた。



「きゃっ!」



「何なの、お前…」



ハルトがでてきた。

今起きたのかはわからないが機嫌は悪そうだ。

後ろで髪を結んでてその姿はかっこいい。

ズルい。



「ハルトさん、おはようございます!」



「おはようございますじゃない、でてけ。」



「まだ入ってません。」



ここで負けると今日ハルトと話す機会は失う。



「じゃ入るな、とっととどっか行け。」



「嫌です。」



「兄貴何やってんの」



後ろの方から弟と思われる人の声が聞こえる。



「あの、弟さん!入れてください!」



弟に助けを求めればいけるかもしれない。



「何兄貴彼女呼んでんの?てかなんで入れないんだよ照れてんのかよ」



「は?照れてねえよむしろ不法侵入しようとしてんだよ」



ハルトと弟のケンカが始まる。

この時間に入ってしまえば良いのでは。



「おじゃましまーす…」



「お前何の用できたの。」



気づくのが早すぎる。

弟はめんどくさくなったのか二階へとあがっていった。



「三日くらい前から校章がないんです…」



「校章?」



それと俺が何の関係がある、という顔。



「もしかしてハルトさん持ってたりしないかなって…何処探しても見当たらないんですよ。」



「それならはやく言えよ…」



え、良いんだ。

嫌がると思っていたからびっくりした。



「俺の制服の何処かに入ってるってか?」



「はい。」



「どんな事したらそんな制服に入るんだよ…」



「どんな事って…」



そ、そうゆう事?



「いやいやいやいや!!!」



ハルトさんとはそうゆう関係にはなってないし体質上そうゆう事が起こるわけもない!!!



「お前まさか寝込みを…」



少し引いた顔でこちらを見てきた。



「あ、でもたまにハルトさんの寝てる写真撮りますよ」



「サラッと言うなよ…」



ハルトフォルダは充実している。



「ないですか?」



ポケットを探っているがどうやら無いようだ。

仕方ない、もう一度自分のブレザーの中を見るしかない。


「校章って無くしたら怒られんの?」



「怒られて買わされますよ多分。 ……あっ!校章!!…ってえっ!?」



赤色の校章だ。

赤色は三年の…



「あ、それ俺のだ。」



「なんでですか!?」



「知らねーよ返せ。」



いつ入ったのかわからないならまぁ思い当たる節は少しある。



「もうそれ私が見つけたんですし緑色に塗装しましょうよ…」



「別に良いけどいつか赤色に戻ると思うぞ。」



緑色の校章は出てくる気配がない。



「屋上に落ちてたりしますかね…」



「それならもう捨てられたりしてるだろ…」



別に見つからなくても正直いい。

ハルトと会う口実が欲しかっただけなんだ。



「緑色のペンあるかな」



「えっ!?本当にしようとしてるんですか!?良いですよそれにペンなんてっ」



「あったわ」



油性ペンで雑に塗られた緑の校章バッジを私に見せる。



「遠目わからなくね。」



「ま、まぁ…」



触ったら色がつきそうだ。

ハルトは私に近寄りかがむと胸のあたりの校章をつける部分に触れた。



「じ、自分で付けれますよ…!!」



ハルトはそんな私を無視する。



「はい、つけた。」



少しはなれたかと思うとベッドに突っ伏した。

え、まさか自爆したの…



「ハルトさん、今絶対校章付ける時我慢しましたよね。」



「少しくらい慣れていかなきゃいけねーだろ…うぇっ…」



慣れたい、とは思ってくれてるのだろうか。

そう思うと嬉しい。

それにこれはハルトの校章。

なんか、特別な気分だ。



「えへへ、これ大事にします…!」



「…変な奴。」



ハルトはこっちを向くと少し笑ってみせた。

あぁ、好きだなあ。



「でもハルトさんは校章いいんですか?やっぱり怒られますって。」



「怒られるの慣れてるし。」



そうゆう問題ではない。



「てかお前本当にこれだけの為に来たんだな。」



ハルトは携帯をいじりはじめる、

でてけって言わないって事は居ていいって事だ。



「講習帰りなんで。」



「何よりもお前が俺の家を覚えている事がこえーけどな。」



笑えない。

確かにストーカーみたいなものだ。



「なんか食う?」



「え?」



「昼じゃん。」



時計を見ると昼になっていた。

そういえば帰りに昼を食べようと思っていたから何も食べてない。

途端におなかが空いてきた。



「良いんですか?」



「弟が多分つくるから。」



弟にご飯を作らせる兄…



「普通逆ですよね…」



「俺が作ると三ツ星になっちまうからな」



「!?」



「嘘だよバカ」



何でもできる人が言うと信じてしまう。

ハルトなら三ツ星レベルを作れそうだ。

…シェフ姿もかっこよさそう。



「変な事考えてんじゃねえよ顔に出てるぞ。」



咄嗟に顔を隠す。



「そ、そんな変な顔してました?」



「にやけてた。」



素直すぎる自分が恥ずかしい。



「シェフハルトさんのカルボナーラ…」



「は?」









ご飯を食べ終わった。

たいへん美味しかった。

兄弟は似るとはこの事だろうか。

ハルトの弟の髪は黒だったりする。

でも、目は似ていた。




「美味しかったです。」



「そう。」



「あの…ハルトさん、私邪魔ですかね。」



もうそろそろハルトが私がいることを我慢していると思うと申し訳なくなってきた。

ハルトは私の質問を無視してテレビの前にあるソファに座った。

横の場所をたたいてこちらを見る。

座れって言ってる。

良いのかな。

密着して座ると嫌な顔をした。



「どうせ校章は俺と話す為の理由だろ。」



ばれてる。

恥ずかしい。



「そ、そうですけど。」



ハルトはリモコンでテレビをつけた。

番組を切り替えて、見たいのを探し始める。



「し、知ってて入れてくれたんですか?」



「だから今もこうやって追い出して無いんだろ。」



「じゃあ最初のは照れ隠いだっ!!!」



ハルトの持つリモコンが私の方へ振り回され寸止めもされずに思いっきり当たる。



「痛い…」



「眠い時は機嫌悪いんだよ」



「へぇ〜…」



でもハルトは寝ぼけている時はベタベタしてくる。



「何時までここにいて良いんですか?」



「お前が帰る時間まで。」



「お前じゃないです。」



ちょっと調子に乗ってみた。

リモコンは私をぶってこない。



「帰すぞ…」



「あ、ご、ごめんなさい!」



暴力よりも怖い。



「おま……カナから熱気感じて熱いんだけど。」



あ、名前でよんでくれた。

にやけるのを抑える。



「え、えっ!?そんな私蒸してますか!?」



「熱い熱い、あー熱い。」



あ、もしかして嫌だから離れろって言ってる?



「わかりましたよーだ。」



意地悪にもう一つ近づく。



「ごめん…寒気するから。」



「良いんですよ、あと少しで帰るんですから。」



「もう帰るの?」



意外な返事。

もう少しいたいけど。



「ハルトさんの家遠いんですもん、これ以上いたら帰るの遅くなります。」



「ふーん。」



「寂しいですか?」



冗談半分で言う。

鼻をつままれた。



「暇になるからな。」



「ほ、ほうでふか。」



そのままハルトの手は下に移動して私の首をつかんだ。

酷く、冷たい手だ。

…死にそう。

自分の心音があがりハルトの口も開かなくなった。



「ハ、ハルトさん…」



「死にそう。」



「え?」



手をはなすときに首をこちょばされひっ、と声がもれる。



「ほら、帰れ。」



「は、はい。」



何がしたかったのかわからない。

少し、怖くも感じた。

今すぐに殺されそうで。

玄関に行き、靴をはいた。



「ハルトさん、今度は泊まりにきていいですか?」



「弟が良いって言ったらな。」



「ハイ!」



嬉しい。

大丈夫、私はハルトが怖くても逃げない。

ハルトは優しいから。



「お休み、カナ。」



優しく微笑むと髪に耳をかけてきた。

耳に触れる手と微笑みにドキドキする。



「お、お休みなさい、ハルトさん。」



自分ばっかりドキドキさせられて、ずるい。

会うたびに好きになってしまう気がした。



「校章、もらっちゃったなぁ。」



ハルトからもらった校章は既に乾いて、赤みがかった緑になっていた。

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