中層街と滑稽なバザール
中層街ーー
そこはとても賑わっていた。バザールと呼ばれる市が毎日開かれ、活気に溢れていた。
こんな人で溢れたバザールを見たのは初めてで私は慌ててしまい、何を考えたのか細い路地へ入って行った。
路地の奥で一息ついた私は改めて自分の状況を確認してみた。
まず、
家を抜け出してきた。これはもう考える必要がない。…結果は分かっているのだから。
次に、
門は無事通過出来た。汚い手を使ったように思えたけれど。
そして現在に至る。全くどうすればいいのか。私は新しいことを知るために中層街へ来た。なのに活気に圧されて人気のない路地に逃げ込んでしまった。
深呼吸をした私は勇気を出して自分の中にある不安、悪い予感を追い出して路地を来た方向へ歩いて行った。
相変わらずバザールは華やかで貴族街では見ることの出来ない場所だった。
「凄い……」
私は好奇心と不安を押さえてゆっくり歩きながらあたりを見回した。色取り取りの花や沢山の果物たちを見て回った。
その時、フードを被った少年が私にぶつかって来た。
「っ…!」
「すいません…」
フードの隙間からチラリと見えた少年の目は濃いピンクでとても綺麗だったが少年とは思えないほどの鋭さを放っていた。その少年は小さく頭を下げると路地へと走って行った。
これだけ人がいればぶつかることも少なくないのだろう。私は歩みを止めずバザールを抜けていった。
ー15分後
私はすっかり人に酔ってしまい、ふらふらと路地へ入り一休みした。




