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騎士と聖女様の100年日誌  作者: 時雨
幼き追憶~緑の剣士~
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脱走

気がつくと私は本を抱えて木に登っていた。

こんな重い本を持ちながらこの巨大樹にどうやって登ったのかも分からなかった。


眼下には中層街と貴族街の境目にある門とその門を守護すると言われる屯兵が小さく見えた。


そうだ、私は、メリッサ先生の授業を脱け出して来たんだっけ。戻らないと怒られるかな。怒ったメリッサ先生の顔が頭よぎった。



メリッサ先生と言うのは私の家庭教師で魔法陣から歴史、古典などなど。様々な分野を担当してる。怒ると怖いメリッサ先生だけど私は嫌いじゃない。脱走したのは深い訳があるのです。


「リーフ、聖魔歴789年に起きた大きな出来事は?」

「…魔王軍の来襲」

「そうね。当たりよ」


退屈過ぎる授業はいつも通りでつまらない。分刻みで作られた私のタイムスケジュールは黒でびっしりと埋まってる。


メリッサ先生は少し私が窓の外を眺めただけでいつも、


「あなたはアーリマン家の一人娘なのよ?分かっているのかしら?」


ええ、分かってますとも。アーリマン家24代当主リーフ・アーリマンですよ…とは言えないのが私。


「はい。メリッサ先生」


お決まりの口調。いいこぶった自分が嫌で嫌で。深い訳とはこの次のメリッサ先生の言葉。


「リーフ…あなたはその翡翠色の瞳を中層街に向けて何が楽しいの?あなたは貴族であり、由緒ある純血のアーリマンの人間なのですよ?…あちらの人間とは格が違うのです」


あちらの人間?あちらの人間とは何?私とは違うの?


「はい。メリ…」


習慣になっていた言葉を思わず飲み込んだ。どこが違うのか。顔か?それともアーリマン家代々の翡翠色の瞳か?それともこの体を流れる血液なのか。私の頭はそれでいっぱいになった。



どうして、区別され、

どうして、私を…私の体を流れる血液が欲しいのか

どうして、………こんな頑丈な門で住む場所を区分されているのか




そして、今に至る。あくまで私の憶測だけどそれから私は椅子を蹴飛ばし、部屋を出てここまで走って来たのだろう。なぜか鮮明に部屋を出るとき次の授業の為部屋の前に来ていた科学と数学を担当してるゲルド先生の顔を覚えている。酷く疲れた顔をしていたっけな。きっと私は知りたいんだ。この門で断たれた世界を。なぜ、と疑問しか浮かんでこない。だから、唯一中層街の門を見下ろせるこの巨大樹に登ったのだろう。私は周りから見たら変わり者らしい。でも、こんな脳みそにしたのは周りの大人だ。金を使ってこれまで以上に自分の家の価値を上げたがる。あたりまえなのだろうけど、金が全てで優しさや愛情のない生活を過ごしひねくれた私には変わり者という言葉がぴったりはまる。


さてと、帰ろうか。そう思った私に産まれて初めて悪知恵というものが思い浮かんだ。


「…怒られるなら…気のすむまで好き勝手やってやる…」


悪知恵といっても他愛ないものだが私の思いついたものは今から帰って怒られるより、気がすむまで貴族街や中層街を探検するというものだった。


そう、私の疑問を少しでも解決へと導くために。


「まずはここから降りることね」


やっとの思いで巨大樹から降りた私。さっき無心でこれを登ったなんて、凄いと我ながら思う。

いっしょに家から持って来たであろう本を開いてみた。びっしりと……この王国の歴史が書かれている。でも私は知っている。この本…この教科書は綺麗事や被害妄想を含む愛国心ーーいや偽愛国心を嫌でも養わせるような内容しか書いていない。


「こんなもの…つまらない…まあ、とりあえず持って行こうかしら」


パタリ


本を閉じ立ち上がる。門へと歩みを進めていくたび私の心は期待でいっぱいになっていった。


ーー


門を通過しようとした私を慌てて一人の兵士が止めようとした。


「なりません。」


彼は何を言っているのだろうか。頭に大量の?を浮かべて私はもう一度通ろうとした。


「お待ちください!」

「…何ですか?」

「このガラドの門を通過するには通行許可証または家紋の入った金属器を提示願います。」


機械のような声で彼はカラカラと言った。


「どうしても通りたいんです!」


そう言うと私は無理矢理兵士を押し退け通過しようとして、止めようとする兵士と取っ組み合いになった。年は幼くとも力には何故か自信があった。格闘術も基本は身につけている。


だが、やはり鉄の鎧を着けた大人の兵士には勝てっこなく、私はなすすべもなく手を引かれて役所に連れて行かれかけた。


「話してください!」


力を振り絞り兵士の手を振り払った私の手首から振り払った反動で母の腕輪が外れ、地面に落ちた。


「母様の腕輪っ!」


腕輪は兵士の足元に転がって行った。

すると、


「っ…これは…!!」


兵士は血相を変えて腕輪を拾いあげた。そして私を見て人が変わったかのように恭しく敬礼した。


「アーリマン家の方ですね。先ほどのご無礼お許しください。」


兵士は私の手を取り腕輪を着けた。私は兵士の態度が変わった理由が分かった。この腕輪にはアーリマン家の家紋がついている。ちなみにアーリマン家の家紋は羽と剣と薔薇がデザインされている。


「解錠ー!」


兵士の声で門が重々しく開いた。私は門を通過し、中層街へと向かった。

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