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愚か者の武者震いとリュシカの出迎え

東鳴(あずまなる)が、うつ伏せのまま半開きの目で見たのは、ニコニコ微笑む少年であった。少年はいかにも興味津々といった風で鳴を見つめてくる。


『バルド、帰っていいよ』

『暴れるかもしれない』

『大丈夫だよ、そんな元気もないようだ。それに早く帰ってリュシカをなだめないと、晩御飯はお前の嫌いな紫ネズミだよ?』

『・・・・・・失礼する』


大男がその場を辞し、その場には長老と鳴だけとなる。


「あいつは、バルド。君の看病をしたリュシカの親父だよ。腕っ節は村一番だが、無骨で堅物なんだ」

「・・・・・・こ、言葉」

「君に施された霊薬は二頭竜の核を凝縮したものでね。滋養強壮・健康回復。それに、地力充填」

「チリョク充填」

「大地の力。大地と対話する力。二頭竜は大地の神の庭番みたいなものだからね」


少年は口を動かしていない。にも拘らず、鳴の頭にはその言葉が生成されていく。テレパシーみたいだ。やはりこの世界に鳴の世界の科学は通用しない。ともかくコミュニケートできることに涙が出る程の感謝をしながら、ようやく居住まいを正して座る。


「大地と君が干渉し合っているから、僕も君に語りかけられる」

「どうしてですか」

「??・・・・・・う~ん。今は堅苦しくしたくなかったから、この姿だけど」


そういうと、少年はその姿をぐにゃり、と歪ませた。そして数秒後、そこには絵に書いたような仙人という感じの老爺が座っていた。


「なっ!」

「普段はなめられないようにこういう姿が多いんだよ」

「あなたは・・・・・・人間じゃないのか」

「ふむ、やっぱりそう来るか。村の長老は人間じゃない、精霊だ、これは常識なんだけどね?・・・・・・う~ん、君はなんなんだい?」


人間じゃない、とあっさり言われて驚いたはずだが、もう頭が麻痺してあまり感慨は湧かない。むしろ、人外を自称する人物に正体を問われ、どうすればいいのかわからない。


「わからない。よくわからない内に、わからなくなった」

「君はあれかい?頭が悪いのかな?」

「違う!本当にわからないんです。夜散歩していたら、気づいたら知らないところに来ていて。僕はきっと別の世界から紛れ込んでしまったんです!」

「ふ~ん・・・・・・僕のような田舎の精霊じゃわからないことも多いけど、流石にここまでわからないと悔しいなぁ」


精霊にわからない、ということがありえるのだろうか。精霊の概念も大分違うらしい。


「あの小道に、僕が倒れていた場所に連れて行ってくれませんか?あそこへ行けば戻れるかもしれません」

「・・・・・・それはできない相談だね」

「どうして!」

「君には大事な霊薬のつけ(・・)を払ってもらわないと」

「といっても、僕には言葉も」

「不可欠なことは僕が教えてあげよう。近くムルチ、君を襲った獣が群れなしてこの集落を襲う。それを迎え撃つのに力を貸してもらう」

「そんな、無理だ」

「二頭竜の霊薬を体内に取り込んだんだよ?大地の力を使えるんだ。上手くすれば君はバルド以上の戦力になる」


唐突に忌まわしい獣との戦線参加を強要され、肩から腹を切り裂かれた記憶が蘇る。しかし、鳴の心に予想外の、いや、彼の性根を考えれば、至極当たり前の感情が湧き上がった。


「怖いのかい?」


長老が聞いてくる。鳴は震えていた。しかし、それは恐怖によるものではない。


「いえ、武者震い、武者震いですよ・・・・・・」


鳴は異能の力が宿った自分の身の上に限りない喜びを感じていた。妄想し、憧れてきた、人とは違う力。こんな風に手に入るとは。

 言葉が通じる人間に出会い、特殊な存在に変わったことを受け、鳴の中の自己嫌悪は霧散していた。帰ることも忘れた。能力を磨いて、強くなろう。獣を倒して、賞賛を集めよう。鳴の目には期待と野望があふれ、他のものは映らなくなった。彼は、何も学んでいない。


 少し怪訝な表情の長老に、もう去るように言われ、長老の家を出た鳴は、リュシカが手を振っているのを目にした。

今日実生活で強く感情の動く出来事があったのですが、展開上それは活かされませんでした。でもこの流れならいずれ活かせる様な気がします。

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