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『妹はミュート。推しは爆音。』  作者: 沼口ちるの


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第9話:同接5万人の「地獄」配信

「あ……えーと。……こんばんは。悠です。……はい」


スマホのカメラに向かって喋りだした瞬間、画面が文字で埋め尽くされた。 昨日まで「3人」だった同時視聴者数(同接)のカウンターが、一気に52,000を超えたのだ。


『キターーーー!!』 『るるな様の兄貴、顔出しはよw』 『昨日のはガチだったの? 演出?』 『紫苑様への愛を語れよクズww』


怒涛の勢いで流れるコメント。 そのほとんどが煽りや冷やかしだ。 Eランクのアバター(デフォルトの地味な青年)が、数万人の視線を浴びて震えている。


「……えっと。昨日は、その……お騒がせしました。別に演出とかじゃなくて、本当に、ただの不注意で……紫苑様にも、妹にも、……ええと、るるなちゃんにも迷惑をかけて……」


僕がしどろもどろに謝罪していると、突然、画面に虹色のエフェクトが走った。


(ピコンッ!) 【SSSランク「るるな」がギフト「応援メガホン(1,000pt)」を贈りました】


「えっ、瑠々!? ……あ、いや、るるなちゃん!?」


コメント欄:『本人キターーー!!』『妹からの公開説教か?』


るるな:『ちょっと、アンタ。喋りが暗いのよ! 見ててイライラするわ。……ほら、これでも食べて元気出しなさいよ(笑)』


るるな:『あ、みんな。私のバカな兄が迷惑かけてごめんね? るるなに免じて、今日は見逃してあげて♡』


SSSランクの「妹」による、完璧な立ち回り。 彼女は僕を弄りつつ、自分のリスナーを僕の枠に繋ぎ止め、配信の空気を「エンタメ」に変えてしまった。投げられた1,000ポイントは、彼女の月収からすれば端金だが、僕にとっては貴重な食費だ。


だが、驚きはそれだけでは終わらなかった。


(ピコンッ!) 【Aランク「紫苑」がギフト「一輪の薔薇(500pt)」を贈りました】


「……っ!! し、紫苑様……!?」


心臓が跳ね上がった。 画面には、あの凛とした、でもどこか影のある紫苑様のアバターが表示されている。


紫苑:『……あまりに無様だったから、つい。貴方、これに懲りたら、次からは大人しくしていなさい。……おやすみなさい』


コメント欄:『え、紫苑様!?』『あのクールな紫苑様がわざわざギフト投げに来た!?』『「大人しくして」って……悠、お前認知されてるのかよww』


リスナーたちは、孤高のAランク配信者である紫苑様が、わざわざこの「炎上中の底辺」の枠に現れたことに驚愕している。 ……僕は知っている。これは昨日の本屋での「釘刺し」の続きだということを。


「……あ、ありがとうございます……! 紫苑様、僕、一生ついていきます……!!」


僕が感極まって叫ぶと、コメント欄はさらに加速する。


『こいつ、妹のギフトには「瑠々」って呼んで失礼なのに、紫苑様にはガチトーンw』 『推しへの忠誠心だけは本物だなww』 『ちょっと面白いじゃねーか』


煽り一色だった空気が、少しずつ「奇妙な愛されキャラ」を見るような目に変わっていく。 結局、ギフトの総額は微々たるもの(手元に残るのは数百円)だったが、僕のフォロワー5万人の前で「推しに叱られる」という、僕にとっては最高のご褒美となった。


配信を切り、大きく息を吐く。 すると、ドアの向こうから「フンッ」と鼻で笑う音が聞こえた。


「……ま、初日にしては合格点ね。アンタ、案外『晒され体質』なんじゃない?」


瑠々の声は、いつもより少しだけ尖っていなかった。

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