第8話:数字だけならSSSランク!?
昨夜の放送事故――通称「るるな様の兄貴・公開処刑事件」の余波は凄まじかった。
僕の『Link-V』のマイページを開くたび、心臓がバクバク鳴る。 昨日まで「48人」だったフォロワー数が、一晩で「55,000人」を突破していた。
「……数字だけ見れば、SSSランクの瑠々に並んじゃってるじゃないか……」
もちろん、これは期待の表れではない。 『あの生意気なSSSランクをブチ切れさせた、伝説のクズ兄を見てやろう』という野次馬根性の結晶だ。 基本無料のこのアプリ、フォローボタンを押すだけならタダである。
だが、現実は甘くない。 ランキング画面を確認すると、僕の横には依然として無慈悲な【Eランク】の文字が。 『Link-V』の規約上、ランク昇格は月一度の集計時のみ。どれだけフォロワーが増えようと、今月の僕は「時給ゼロ」の底辺のままだ。
「……何よ、その顔。フォロワーが増えて、自分が人気者になったとでも思ってるわけ?」
リビングへ行くと、瑠々が鏡の前で入念にメイクを直していた。 彼女のフォロワー数も微増しているが、それ以上に「身内に甘い顔を見せないガチ勢」としてのブランドが確立され、より熱狂的な信者が増えたらしい。
「思ってないよ。……でも、次の配信、何喋ればいいか分からなくてさ」
「決まってるでしょ。アンタの価値は、私にボロクソに言われる『情けない兄』なんだから。余計なプライド捨てて、数字があるうちに媚び売りなさいよ。……あ、それと」
瑠々はリップを置くと、僕を鋭く睨みつけた。
「あんたのフォロワーの中に、運営のスカウトも紛れ込んでるから。……変なことして、私のSSSに泥を塗ったら、マジで実家から放逐してあげる」
「……わかってるって」
僕は自分の部屋に戻り、スマホを構える。 今の僕は、いわば「見世物小屋の主」。 ギフト(収益)は全く期待できないが、数万人の視線が集まるこの状況を、どうにかして紫苑様のランクアップに繋げられないか……。
そんなことを考えていると、画面に一通のダイレクトメッセージが届いた。
【Link-V運営事務局:悠様。急遽、来週の公式特番『次世代スター・インタビュー』への出演をお願いしたく……】
(……来た。スカウトというか、完全に火に油を注ぎに来てるな……)
公式特番。そこには当然、今月の注目株が勢揃いする。 瑠々はもちろん……もしかしたら、紫苑様も。
僕は震える指で、返信ボタンを押した。




