第78話:聖夜の奇跡、歌唱王世代の再臨
雪の降る聖夜。特設の巨大仮想ドーム。 今夜行われるのは、Link-Vが始まって以来の、そして今後二度とないと言われる「SSSランク・トリプル共演」。
かつて同じ時代を競い合い、伝説を創り上げた3人――。 漆黒の魔王、宵闇堂魔。 銀河の歌姫、星野ルミ。 そして、今やサトエンの代表でありながら、伝説の歌い手『るるな』としての顔を持つ、佐藤瑠々。
この3人が同じステージに立つという報せに、世界中の回線がパンク寸前の熱狂に包まれていました。
「……前座とはいえ、ここでヘマをすればサトエンの名に傷がつきますわ。全員、死ぬ気で歌いなさい!」
SSランクの紫苑が、バックステージでAランク以上のメンバーを一喝します。 今回のイベントは、前座としてAランク以上の全ライバーが参加できる「任意型ライブ」。サトエンからは、紫苑を筆頭に、エースの悠真、そしてAランクへ昇格したアリアたちが顔を揃えていました。
「……すごい熱気だね。会場の空気が震えてるよ」 悠真がステージ袖から客席を見つめます。そこには億単位の視聴者という、目に見えない巨大な波が渦巻いていました。
「悠真さん……。……『視え』ます。今夜、このステージから放たれる『音』は、Link-Vのシステムそのものを進化させる特異点になる。……皆さんの感情が、限界を超えています」 仮面の「8」として見守るエイトが、静かに告げました。
トップバッターはサトエンの精鋭たち。 紫苑の圧倒的な命令口調でのコーラス、アリアの情熱的なダンス、そして悠真の「心に直接届く」光の歌。 Aランク以上の実力者たちが繋ぐバトンは、前座とは思えないほどのクオリティで会場を暖め、そしてついに、その瞬間が訪れます。
「――待たせたわね、有象無象の皆様」
ステージ中央に、ピンク髪のツインテールを揺らした**『るるな』**が、現役時代の衣装で降臨しました。その左右には、漆黒の翼を広げた宵闇堂魔と、星屑を纏った星野ルミ。
「……ルミ、堂魔。……いくわよ。世界に『歌』の本当の意味を思い出させてあげる」
3人の声が重なった瞬間、ドームの全システムが歓喜の悲鳴を上げました。 それは「放送事故」など起きようがない、完璧に制御された圧倒的な「格」の暴力。全視聴者が言葉を失い、ただその旋律に涙を流す。
その光景を、優美那はもはやスケッチブックを持つことすら忘れ、ただ膝を突いて見上げていました。
(……ああ。……これです。……時代を創ったSSSたちの、魂の共鳴……。悠さんが目指すべき、究極の……『愛』の形……)
聖夜の空に、伝説たちの歌声が響き渡る。 それはサトエンがLink-Vの頂点へと至る、決定的な証明となったのでした。




