第67話:預言者のプライベート、そして「本当の兄」
「……お兄ちゃん、もう食べられないよ……むにゃ」
ソファで寝言を呟くエイト。 その場にいた悠真、瑠々、そしてアリアの三人が、同時に動きを止めた。
「……え、今、エイトくん『お兄ちゃん』って言った?」 悠真が少し照れくさそうに頬を掻く。「僕のこと、そんな風に慕ってくれてたんだな……」
「ちょっとお兄ちゃん、デレデレしないでよ! エイトくん、私のポジションを狙ってるの!?」 瑠々がキーキーと騒ぎ立てる中、アリアだけは「シュウ様の弟子の義兄……それは実質、私とシュウ様の……」と、あらぬ方向へ妄想を飛ばしている。
翌朝。 しっかりカツ丼3杯分のエネルギーを蓄えて復活したエイトが、事務所にやってきた。
「おはようございます、悠真さん。昨日はすみません、寝落ちしちゃって」
「いいよいいよ、エイト『弟』くん! さあ、今日も頑張ろうな!」 悠真が親しげに肩を叩くと、エイトは不思議そうに小首を傾げた。
「……え、なんで『弟』なんですか? 僕、兄なら家にいますけど」
「「「えっ?」」」
「……え、言ってませんでしたっけ? 僕、同居してる本当の兄がいるんです。昨日の寝言も、多分兄が作る夜食が重すぎた時の記憶です。……あ、お兄ちゃんからLINEだ。『今日のご飯、唐揚げ1kgでいいか?』って。……もう、占わなくても胃もたれするのが分かりますよ」
悠真の「自称・兄貴」としてのドヤ顔が、一瞬で凍りついた。
「……そ、そうなんだ。本当のお兄さんがいるんだね……」
「はい。まあ、シュウ様と知り合う前からずっと面倒を見てくれてる、ただの一般人ですけど。……でも、僕が20回占って動けなくなると、いつもおんぶして帰ってくれる、お節介な兄です」
エイトはスマホの画面を見つめ、少しだけ柔らかい表情を見せる。
「……なんだ。お兄ちゃんの勘違いだったわけね」 瑠々がここぞとばかりにニヤニヤしながら悠真を突く。
「……っ、別にいいだろ! でも、エイトをそこまで甘やかしてるお兄さんっていうのも、ちょっと気になるな……」
サトエンの面々は、まだ見ぬ「エイトの本当の兄」という存在に、妙な対抗心と興味を抱き始めるのだった。
「……さて。悠真さん、私的な話は終わりです。……今日の占い、一回目。……『今日の特訓、悠真さんが僕の歌を聴いて、三回は気絶する』と出ました」
「……え、僕、Sランクなのに気絶するの!?」
預言者の家族事情が判明し、物語は「運命の歌唱特訓」へと舵を切っていく。




