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『妹はミュート。推しは爆音。』  作者: 沼口ちるの


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第66話:神託の対価、空腹の預言者

エイトの占い配信は、その後も伝説として語り継がれていました。しかし、配信が終わった直後、スタジオに駆け込んだ悠真が目にしたのは、神々しい預言者の姿ではありませんでした。


「……は、腹、減った……。悠真さん……何か、肉……脂っこい肉を……」


スタジオの床に力なく崩れ落ち、お腹を「ギュルルルゥ……」と盛大に鳴らすエイト。 その顔は、まるで数日間何も食べていないかのように土気色でした。


「エイトくん!? 大丈夫か!?」


慌てて阿久津マネージャーが特上のカツ丼を差し出すと、エイトはそれを獣のような勢いで貪り始めました。


「……ふぅ。……死ぬかと思いました。……僕の『視る』能力は、脳のエネルギーを異常に消費するんです。一回視るたびに、フルマラソンを走ったくらいのカロリーが消し飛びます」


阿久津マネージャーが冷静にデータを手帳に書き込みます。 「なるほど。霧島エイトの能力限界……一日の使用回数は最大で20回。それ以上は、命に関わる低血糖状態に陥る、と。……これは厳重な管理が必要ですね」


「20回か……。配信でリスナーに使いすぎると、プライベートで何も視れなくなっちゃうね」 悠真が心配そうに言うと、エイトは三杯目のカツ丼を口に運びながら頷きました。


「……そうです。だから、シュウ様からは『安売りするな』と言われていたんです。……でも、サトエンの空気にあてられて、つい……」


その時、ラウンジの方から聞き覚えのある、少し高い声が響いてきました。


「え、エイトくん! 20回!? あと何回残ってるの!? 今すぐシュウ様の明日のラッキーカラーを占って!!」


十九条アリアが、シュウの限定Tシャツを握りしめ、目を血走らせて突進してきました。


「あ、アリアさん、落ち着いて! エイトくん、もう限界なんだから!」


「……あ、アリアさん。……今のあなたに視えるのは、シュウ様のことじゃなくて……『推し活にお金を使いすぎて、来月の家賃が払えなくなる絶望の未来』だけですよ……」


「……っ!!」


アリアがその場で石化します。 エイトは最後の一口を飲み込み、力尽きたようにソファに倒れ込みました。


「……これで19回目。……あと1回は、お兄ちゃんの明日の献立を占うために……残しておきます……。グー……」


「寝ちゃった。……でも、そっか。彼も命を削って『運命』と戦ってるんだね」


悠真は、眠るエイトに毛布をかけながら、サトエンに加わった新しい「家族」の覚悟を、改めて噛み締めていました。 チート級の能力に隠された、あまりにも人間臭い代償。それが、エイトをサトエンのメンバーとしてより深く結びつけていくことになったのです。

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