第63話:運命のSSS、占星の神田シュウ
「……お兄ちゃん、ついに『あの男』が動いたわよ」
瑠々の表情が、かつてないほど「同業者」への警戒心で引き締まっていた。 サトエンの役員室に届いた一通のビデオレター。再生された画面に映ったのは、無数の星図とキャンドルに囲まれた、神秘的な美貌を持つ青年だった。
SSSランク・神田シュウ。 歌唱力は皆無。本人は「歌えば天変地異が起きる」と自虐するほど音痴だが、その代わりに手にしたのは、統計学、心理学、そして本物の直感を融合させた『絶対的中』の占い枠。 数百万人の人生を導き、国家予算レベルの投げ銭を動かす、配信界の「生ける予言者」である。
「やあ、サトエンの皆さん。……悠真くん、君の『男運』の爆発、素晴らしい星の並びだね」
画面越しに優雅に微笑むシュウ。その横には、ガチガチに緊張した一人の少年が立っていた。
「今日は相談があってね。僕の唯一の弟子、霧島エイトを君の事務所で預かってくれないかな。……見ての通り、彼は現在Cランク。僕の血を引いて歌は絶望的だが、他人の『運命』を見る目だけは本物だよ」
「……弟子をサトエンに?」 悠真が驚く中、阿久津マネージャーが素早く資料を広げる。 「霧島エイト。シュウ氏が『次代の預言者』として育てた天才です。……歌は確かに酷いですが、彼が配信で『今日のラッキーリスナー』を指名すると、その相手が宝くじに当たったり、懸賞に当選したりと、オカルトじみた実績を叩き出しています」
数日後、神田シュウ本人がサトエンに現れた。
「シュウさん! 本物だ……」 悠真が圧倒されていると、シュウは悠真の手をそっと握り、その手のひらを覗き込んだ。
「……なるほど。悠真くん、君の周りには『女王』の星が四つ、五つ……。そして、君自身がその引力の中心だ。……僕の弟子を、君の光の側に置いてやってほしい。彼は今の『占い枠』という閉じた世界から、君のような『人間味』を学ぶべきなんだ」
「……はぁ、SSSの方に頼まれたら断れないわね」 瑠々が溜息をつきながら、弟子であるエイトを見る。 エイトは悠真の服の裾をぎゅっと掴み、小声で呟いた。
「……あの、よろしくお願いします。……悠真さんの背後、今……ものすごく『ピンク色のオーラ』と『黒い殺気』が混ざり合ってて、見てて飽きないです……」
「えっ、何それ怖いんだけど!?」
こうして、歌唱力ゼロ、運勢操作力マックスの「占い枠のサラブレッド」霧島エイトがサトエンに合流した。
「……阿久津さん、これは新しいビジネスチャンスだわ」 瑠々が不敵に笑う。 「お兄ちゃんの『婦女子人気』をエイトに占わせれば、的中率100%の『聖地巡礼・運命ガチャ』が作れる……!」
サトエンに、歌声ではない「運命」という名の新たな嵐が吹き込み始めた。




