第57話:エースの証明、そして高すぎる背中
サトエン事務所の廊下には、一期生10人の興奮した声が響いていた。 「聞いた!? アリアさん、ついにAランク昇格だって!」 「他のみんなもBランク上位に食い込んでる。サトエン効果、マジで半端ないわ……!」
デビューからわずか一週間。十九条アリアを筆頭に、一期生たちは驚異的なスピードでランクを上げていた。しかし、そんな彼女たちが事務所のメインルームに入った瞬間、場の空気に圧倒され、足を止めた。
そこには、巨大な「S」の文字が刻まれたLink-Vからの公式トロフィーを前に、困惑した顔の悠真がいた。
「……え、あ……僕、Sランクになっちゃったみたいなんだけど……」
静まり返る事務所。 阿久津マネージャーが、震える手で最新のデータをモニターに映し出す。
悠真:Aランク上位 → 【Sランク昇格確定】
同時視聴者数:15万人(安定)
一期生サポート配信での好感度爆増、および大手刺客とのバトル評価が加算
「……お、お兄ちゃん……マジ!? 1週間前までAランクだったのに、もう紫苑さんたちに追いついちゃったの!?」 瑠々が叫ぶ。
アリアたちは、自分たちの「Aランク昇格」という喜びが、一瞬で吹き飛ぶのを感じていた。 「……私たちのサポートをしながら、自分の配信も完璧にこなして……その上で、さらに上のステージへ行っちゃったんだ」 アリアが、悠真の背中を見つめながら呟く。自分たちも爆速で成長している自負はあった。けれど、目の前の先輩は、その何倍もの速度で「次元」を変えてしまったのだ。
「悠、おめでとう。これでようやく、私の隣に立つ『義務』が生じたわね」 紫苑様が不敵に、けれどどこか嬉しそうに微笑む。
「悠さん……! これで四人ですね。サトエンの『Sランク以上』のメンバーが……!」 優美那も目を輝かせている。
SSSランクの瑠々、Sランクの紫苑と優美那。そこに悠真が加わったことで、サトエンの「中枢」は完全に雲の上の存在へと変貌した。
「……みんな、そんなに見ないでよ。……一期生のみんなが頑張ってるのを見て、僕も負けてられないなって思っただけなんだ」 悠真は照れくさそうに笑うが、その「無自覚な怪物」ぶりに、一期生たちは改めて戦慄した。
「……アリア、見た? あの笑顔」 「ええ……。優しそうな顔をして、絶望的な実力差を見せつけてくる。……最高に格好良くて、最高にムカつく先輩だわ」
アリアの瞳に、再び火がつく。 Sランク。それは、今の自分たちにとってはまだ遠い星。けれど、その星がすぐ近くで笑っている。
「――よし! お兄ちゃんがSランクになったお祝いよ! 今夜はパーティーね!」 瑠々の号令で、事務所は再び活気づく。
悠真がSランクへ到達したことで、サトエンは「期待の新人事務所」から、文字通り「世界の頂点を目指す軍団」へとその姿を変えた。




