第55話:怪物たちの宴、震えるヒヨコたち
「……えー。というわけで、昨日の今日でなんだけど。大手二社との和解と親睦を兼ねた立食パーティーを開催しまーす!」
瑠々の軽い掛け声と共に、サトエンの広大なラウンジには、およそこの世のものとは思えない「密度」のメンツが集結していた。
中央には、昨夜死闘を繰り広げたSSSランク・星野ルミと、悠馬の妹にして最強の瑠々が、何食わぬ顔で新作スイーツの批評をしている。 その横では、SSランク・宵闇堂魔が、紫苑様と「喉のケアに最適なハーブティー」について淡々と議論を交わしていた。
「……あ、あの。優美那さん、これ……本当に現実ですか?」
壁際で固まっているのは、サトエンの一期生10人だ。 「……見て、あっちにはAランクの悠馬先輩と、Sランクの優美那さんが談笑してる。……その向こうには、昨夜画面を破壊したSSSランクが二人。……ここ、魔王城かなんか?」
アリアが震えながら呟く。3000人から選ばれたエリートであるはずの彼らも、目の前に並ぶ「生きた伝説」たちの放つ威圧感の前では、生まれたての小鳥同然だった。
「ほら、一期生のみんなもこっちに来て! ルミさんに挨拶するチャンスだよ!」 悠馬が能天気に手招きするが、新人たちは一歩も動けない。
「……悠馬。貴方、少しは自覚を持ちなさい」 紫苑様が溜息をつきながら歩み寄る。 「貴方が『普通』に接しているその人たちは、一人の一存で配信界のトレンドを数ヶ月支配できる怪物なのよ。……新人たちがビビり倒すのも無理はないわ」
「えぇ? でも、みんな良い人だよ? 宵闇さんなんて、さっき僕の絶叫のコツを熱心にメモしてくれてたし」
「それは貴方が天然の怪物だからよ……」
その時、星野ルミがグラスを片手に、新人たちの元へ歩いてきた。 「……貴方たちが、あの悠真を支える一期生ね? 昨日のバトル、裏で見てたわ。……サトエンを選んだ理由、なんとなく分かった気がする」
ルミがふわりと微笑んだ瞬間、新人たちの半分がその輝きに射抜かれて失神しかけた。
「……ルミさん、脅かさないでくださいよ。彼らはこれからのサトエンを背負う宝なんですから」 優美那が優しくフォローに入る。
「わかってるわよ。……ねえ、瑠々。これだけのメンツが揃ったんだから、サトエン一期生のデビュー、私たちがバックアップしてあげてもいいわよ?」
その一言に、事務所内が静まり返った。 大手の筆頭たちが、新人のデビューを支援する。それは前代未聞の、そして最高の「お墨付き」だった。
「……お兄ちゃん。……サトエン、もう止まらないわね」 瑠々がニヤリと笑い、悠馬の背中を叩く。
新人たちの恐怖は、いつしか「この場所に立っている」という猛烈な高揚感へと変わっていった。




