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『妹はミュート。推しは爆音。』  作者: 沼口ちるの


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第48話:ローストビーフの騎士(ナイト)

「……えー、皆さんお久しぶりです。Aランクの悠です。いろいろバタバタしてて、久しぶりの通常歌枠ですが……」


配信開始ボタンを押した瞬間、コメント欄の流速が僕の予想を遥かに超えていた。


『待ってたぞ、ローストビーフの騎士!』 『Aランクおめでとう! それはそれとして、ダイブの着地10点満点だったぞw』 『「ぐぇふ」をサンプリングしてリミックス曲作ったから聴いてくれ』


「……ちょっと待って。なんでみんな、あの親睦会での出来事を知ってるの!?」


僕は戦慄した。あの場には身内しかいなかったはずだ。 だが、答えはすぐに見つかった。画面の端に流れてきた公式の「おすすめ投稿」――発信元は**【サトウ・エンターテインメント公式(代表:瑠々)】**。


そこには、僕が最高にかっこよく歌い上げ、次の瞬間にローストビーフへ突っ込んでいく「完璧なスロー映像」が、これ以上ない高画質でアップされていたのだ。


「るーるー!! 何してくれてんの!!」


画面外から「あはは! 反響すごくてフォロワー爆増したわよ、感謝してよね!」という瑠々の笑い声が聞こえてくる。


『瑠々社長、ナイス共有w』 『おかげで「Aランクの悠くんは遠い存在」っていう不安が吹き飛んだわ』 『むしろ親近感しかわかない。一生ついていくわ、そのローストビーフに』


リスナーたちは、僕を馬鹿にしているわけじゃなかった。 むしろ、ランクが上がって手の届かないところへ行ってしまったと思っていた僕が、相変わらず「僕のまま」であることを喜んでくれていた。


「……はぁ。もう、好きに呼んでよ。……でも、歌う時はちゃんと聴いてよね」


苦笑いしながらマイクを調整する。 すると、コメント欄に懐かしい名前が並んだ。


猫パンチ:『ローストビーフ、美味しそうだったね。……おかえり、悠くん』 たなか:『Aランクになっても事故るあたり、僕たちの悠くんだなって安心したよ』


「……。……。……ただいま。……じゃあ、一曲目は……あの事故った曲の『リベンジ』から、いかせてもらいます」


僕がイントロを流すと、コメント欄は一変して「聴機体制」に入った。 温かいいじりと、揺るぎない信頼。 妹のいたずらによって、僕とリスナーの絆は、Aランクという高い壁を越えてより深く結びついた。


その様子を、自室のベッドでタブレットから眺めていた紫苑は、画面に向かって小さくグラスを掲げた。 「……貴方のその『隙』こそが、人々を惹きつける最大の才能だということに、いつ気付くのかしらね……悠」


配信は、過去最高の同時視聴者数と、温かい笑いに包まれながら夜更けまで続いた。

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