第44話:選ばれし10人、サトエンの産声
「……最終結果が出ました。男子3名、女子7名。これがサトエン一期生の顔触れです」
鉄マネージャーが淡々とタブレットを操作し、10枚のポートフォリオを壁に映し出す。 瑠々は腕を組みながら、その男女比を見て少しだけ眉を寄せた。
「……やっぱり、こうなっちゃうのね。女子の方が応募数も熱量も圧倒的だったし」
「業界の性質上、仕方ありません」 阿久津が冷静に補足する。 「男性ライバーは固定ファンがつきにくい一方で、跳ねた時の爆発力が高い。対して女性は初動の安定感が抜群です。この『3:7』という比率は、リスクヘッジと収益性のバランスとしては理想的と言えます」
僕は、映し出された10人の顔ぶれを一人ずつ確認した。 十九条アリアを筆頭に、確かにどの子も一筋縄ではいかなそうな、強烈な個性の持ち主ばかりだ。
「……男子3人も、なかなかの『癖物』揃いですね」
一人は、元・劇団員で演技力抜群の正統派イケメン。 一人は、超絶技巧のギターテクを持ちながら、極度の人見知りで一言も喋らないシャイボーイ。 そしてもう一人は、僕の「絶叫配信」に感銘を受け、なぜか「師匠(悠馬)を超えに来ました!」と豪語する、暑苦しいまでの熱血少年。
「面白いじゃない。……この10人が、私の『サトエン』の看板を背負うのね」 瑠々が不敵に微笑む。
その時、審査員としてオブザーバー参加していた白雪(紫苑)が、椅子から立ち上がった。 彼女は10人の資料には目もくれず、僕の肩を通りすがりに軽く叩いた。
「……悠。この子たちが『使い物』になるかどうかは、貴方の背中にかかっているわよ。……一期生にとって、貴方は憧れのAランクであり、同時に『サトウ・エンターテインメント』の象徴。……もし彼らが期待外れなら、その時は貴方ごと、私が叩き潰してあげるわ」
「……っ。はい、わかってます」
紫苑様の「洗礼」のような激励。 それは、僕がもう「教わる側」だけではなく、10人の人生を預かる「導く側」になったという厳しい宣告でもあった。
「――よし! 鉄さん、結城さん。さっそくデビュー準備を。阿久津さんは契約の最終チェックを。……お兄ちゃんは、この10人と面談!」
「ええっ、僕一人で!?」
「当たり前でしょ。アンタはサトエンの『エース』なんだから。……しっかり、威厳見せてきなさいよ?」
こうして、3000人の頂点に立った「選ばれし10人」と、新米先輩・悠馬の、嵐のような初対面が幕を開けることになった。




