第40話:ネーミングセンス、ランク外
「――というわけで! 僕と瑠々で、新事務所を立ち上げることにしました!」
Aランク昇格後、初の公式生配信。 僕は気合を入れて、瑠々と並んで画面の前に立った。 背後には、瑠々が5分で作った「サトウ・エンターテインメント」というフォント剥き出しのロゴが躍っている。
「事務所名は、『サトウ・エンターテインメント』です! よろしくお願いします!」
満面の笑みで発表した僕に対し、コメント欄の反応は……予想外の方向へと爆走した。
『……え、ダサくね?』 『サトウ・エンターテインメントwww 近所の砂糖問屋かよw』 『SSSランクの妹とAランクの兄が組んで、名前がそれ? 嘘だろ?』
「……えっ、ええ!? そんなに変かな? わかりやすくていいと思うんだけど」
僕の狼狽をよそに、大喜利大会が始まる。 『佐藤工務店に一票』 『いっそ「有限会社・佐藤」の方が潔い』 『悠くんのネーミングセンス、Eランク以下だった件』
「ちょっとあんたたち! 私が適当に決めた名前に文句あるわけ!?」 社長(瑠々)が画面外から怒鳴り散らすが、リスナーの勢いは止まらない。
『瑠々社長w 逆ギレ乙www』 『社長、せめて横文字にしましょうよ。「Sugar Express」とかさ』 『それだとかっこよすぎるから「サトエン」でいいよ、サトエン』
「サトエン……。なんか、急にゆるキャラみたいな響きになったな……」
その時、画面に一つの「紫色の通知」が届いた。
【Aランク「紫苑」が「喝(1,000pt)」を贈りました】 紫苑:『……砂糖なんて甘っちょろい名前、私のパートナーに相応しくないわ。いっそ「紫苑の下僕たちの集い」に改名しなさい。……今すぐに』
「それはそれで別の問題が発生します、紫苑様!!」
結局、一時間の設立記念配信は、僕の門出を祝うというよりは、9割が事務所名へのダメ出しと、僕のセンスのなさを嘆くコメントで埋め尽くされた。
「……お兄ちゃん。やっぱり名前、もう一回考え直さない?」 配信終了後、瑠々が少しだけ遠い目をしながら呟いた。
「……そうだね。でも、リスナーがあんなに笑ってくれたなら、ある意味、最高のスタートだったのかもよ」
「ポジティブすぎ。……まあ、いいわ。『サトエン』が業界を震わせる名前になるまで、アンタをこき使ってあげるから」
事務所名はともかく、僕たちの「自分たちの居場所」は、これ以上ないほど賑やかに、そして温かく産声を上げたのだった。




