第35話:最強の援護射撃、盤上の狂乱
昇格戦二日目。 Bランク三羽烏が牙を剥いた。
「悠真、悪いけどこれが『大人のやり方』だ。セラ、ゴンゾウ、やれ!」
1位のカイジが合図すると、2位のセラと3位のゴンゾウが自分のリスナーを全員カイジの枠へ誘導。さらに、僕の配信画面に組織的な荒らしコメントを流し込み、歌を物理的に邪魔し始めた。
「……っ、音が、聞き取りづらい……!」
圧倒的な「数」の暴力。僕のスコアはみるみる引き離され、再び最下位へ。 カイジたちは勝ちを確信し、下卑た笑い声を上げる。
だが、その時。 僕の配信画面に、突如として【伝説級】の通知が鳴り響いた。
(ピコンッ!!) 【SSSランク「瑠々」がギフト「世界樹の冠(100,000pt)」を10連投しました】
『……え、瑠々様!? 本物のSSSランクがなんでここに!?』 『おやすみ配信中の瑠々様が、Bランクの枠に降臨したぞ!?』
コメント欄がパニックになる中、瑠々が自身のチャンネルからリンクを飛ばす。 「……私の『家族』を数でいじめるなんて、いい度胸ね。……家畜兵団、全員突撃。この『お庭』を更地にしなさい」
さらに、追い打ちをかけるように黄金のエフェクトが舞う。
【Aランク「優美那」が参戦:『悠さんの歌を邪魔しないで! 悠さんの歌は、私が守る!』】 Aランクに昇格したばかりの優美那が、自身のファンを引き連れて僕の枠の「盾」となった。彼女の清廉な歌声が、荒らしのノイズをかき消していく。
「な、なんだこの援軍は……! だが、まだだ! 数字ならまだ僕たちが――」
カイジが叫ぼうとした瞬間。 全ユーザーの画面が強制的にブラックアウトした。 そして、漆黒の背景に、冷徹な紫色の文字が浮かび上がる。
【Aランク・トップ「紫苑」が「喝」を贈りました】
画面に現れたのは、バイト先の本屋のカウンターで、タブレットを片手に冷笑を浮かべる白雪さん。
紫苑:『……五月蝿いわね、小蝿ども。……私の「所有物」に触れていいのは、私だけよ』
紫苑様が放ったのは、ギフトではなく「圧倒的な影響力」。 彼女の一言で、Link-Vの運営さえも動く。カイジたちの不正なリスナー誘導が「利用規約違反」として検知され、彼らのスコアが次々と没収されていく。
「……。……。……ははっ。……ありがとうございます、みんな」
僕は再びマイクを握りしめた。 妹(SSSランク)、親友(Aランク)、そして師匠(Aランク最強)。 この世界を支配する「女王たち」に守られ、僕は今、誰よりも自由に、誰よりも残酷に歌える。
「……三羽烏。……聞こえますか? これが、僕の『最後の通告』です」
白雪さんから授かった「劇薬」が、さらに深い、深淵のメロディへと進化する。 僕のスコアは、もはや計測不能な次元へと跳ね上がり、三羽烏の城を完膚なきまでに叩き潰した。
二日目終了。 リザルト画面に表示された僕のスコアは、2位のカイジに10倍以上の差をつけていた。




