第34話:開戦、昇格戦(プロモーション・バトル)
「――さあ、Link-V全ユーザー注目! Bランクの覇権を賭けた、地獄の三日間が始まります!」
運営が用意した特設ページ。そこには僕と、Bランク上位3人のスコアがリアルタイムで表示されている。 相手はBランク1位の戦略家・カイジ、2位のASMRの女王・セラ、3位のゲーム実況界の古参・ゴンゾウ。
彼らが一斉に配信を開始した瞬間、画面は数百万ポイントという、Bランクとは思えない異常なギフトの嵐に包まれた。
『おいおい、初日から飛ばしすぎだろ三羽烏!』 『悠くんのスコアが全然追いついてない……これが「主」の集金力か……』
カイジたちはリスナーを煽り、射幸心を煽ることで、僕の「純粋な歌枠」を数字で圧殺しにかかっていた。 案の定、僕の順位は初日の1時間で最下位まで転落する。
「……ふふ、悠真くん。歌が上手いだけじゃ、この『数字の戦場』は生き残れないんだよ」 カイジの勝ち誇ったような声が、コラボ画面越しに響く。
だが、僕は焦らなかった。 マイクの向こう側、バイト先の本屋で、冷たい瞳で僕の配信をモニターしているであろう紫苑様の顔を思い浮かべる。
「……紫苑様、見ていてください。……あなたの教えは、こんな『数字の遊び』に負けるようなものじゃない」
僕は白雪さんから授かった「劇薬」……ある禁断のクラシック・アレンジのイントロを流した。 それは、人間の脳を直接揺さぶり、理性を麻痺させるような、超高難易度の「狂気」の旋律。
「――っ、おおおおおお!!」
歌い始めた瞬間、僕の枠のコメント欄が凍りついた。 数日前の「絶叫」とは違う。それは、完全にコントロールされた「暴力的なまでの美声」。 聴く者の思考を停止させ、ただひたすらに「もっと聴きたい」という飢餓感を植え付ける。
『……なんだ、これ。手が勝手にギフトに動く……』 『怖い、でも、聴くのをやめられない……!』
最下位だった僕のスコアバーが、バグのような速度で跳ね上がり始めた。 10万、50万、100万――。 三羽烏が何年もかけて築き上げた「集金のシステム」を、僕の「声」という暴力が、根本から破壊していく。
「バカな!? スコアが逆転した……!? 何をしたんだ、悠真!」 カイジの焦った声が漏れる。
「……僕は、ただ歌っているだけです。……あなたたちの『庭』を、焼き払うために」
初日にして、Bランクのパワーバランスが崩壊した。 だが、三羽烏もこのままでは終わらない。 二日目、三位のゴンゾウと二位のセラが、僕を潰すための「協力体制」を敷き始める。
その頃、佐藤家のリビングでは。 「……お兄ちゃん、完全に『魔王』の顔になってるわね」 瑠々がゾクッとした表情で、最高画質のモニターを見つめていた。




