第32話:怒濤の進撃、Bランクの処刑場
優美那の記念ライブから一夜。SNSとLink-Vのタイムラインは、僕たちのデュエットの切り抜き動画で埋め尽くされていた。
『悠の歌唱力がバケモノ級に進化してる』 『Bランクにいるのがおかしい。今すぐAに上げろ』
同接数は常時1万5,000人を超え、ギフトの勢いも止まらない。 だが、急激にランクアップの階段を駆け上がる僕を、快く思わない連中もいた。
「……あー、悠くん? ちょっとコラボいいかな。僕もBランク上位なんだけど、君の最近のやり方、ちょっと『Aランクへの媚び』が酷くない?」
配信中に割り込んできたのは、Bランクで数年停滞している「古参」の配信者だった。背後には、彼と同じように僕の躍進を疎ましく思うモブ配信者たちのリスナーが群がっている。
「媚び、ですか。……僕はただ、最高のステージで歌っただけですよ」
「ハッ! 優美那や紫苑の威光を借りてるだけだろ。実力を見せろよ、実力を。今から僕と『スコア対決』で勝負しろ。負けたらその生意気な喉、しばらく黙らせてやるからさ」
コメント欄が荒れる。 だが、今の僕には迷いも恐怖もなかった。
「……いいですよ。ただし、歌で。……僕の『ノイズ』になるなら、力ずくで黙ってもらいます」
僕はマイクを握りしめた。 紫苑様に叩き込まれた基礎、優美那と共鳴した魂、そして自分自身の飢餓感。 すべてを乗せた一曲が始まった瞬間、相手のBランカーのリスナーたちさえも、タイピングする手を止めた。
格の違い。 それは数字ではなく、一音の重みに現れていた。 数分後、対戦相手のスコアは僕の半分にも満たず、彼は顔を真っ赤にして無言で配信を切った。
「……お疲れ様でした。……次の方、いますか?」
圧倒的な実力による「処刑」。 邪魔なモブを文字通り蹴散らしながら、僕のランクメーターはついに、黄金に輝く【A】の境界線へと手をかけた。
その様子を自室で見ていた瑠々が、コーラを飲みながら呟く。 「……やっと、スタートラインね。お兄ちゃん」
そしてバイト先。 白雪さんは、僕に負けたBランカーたちの末路をスマホで確認し、冷たい、けれどどこか嬉しそうな微笑を浮かべた。
「……掃除ご苦労様。……さあ、Aランク(私の世界)への招待状を、その手で掴み取りなさい」




