第25話:並び立つ新星、変わらぬ背中
「――ランク集計、完了しました」
スマホの通知が深夜の静寂を震わせる。 僕のマイページに刻まれたのは、重厚な銀色の【B】の文字。
そして、ランキングのトップには、感極まった表情で泣き笑いする優美那のアバター。 彼女の横には、ついに手に入れた黄金の【A】の称号が輝いていた。
『優美那、Aランク昇格おめでとう!』 『悠もBランクか! ついに「中堅」の仲間入りだな』 『二人のデッドヒート、最高だったぜ!』
コメント欄はお祭り騒ぎだ。 Bランク。時給換算で最大13万円。 生活に余裕が出るどころか、機材のアップグレードや外注の動画制作も視野に入る。配信者として、ようやく「独り立ち」が許される領域だ。
「……瑠々。僕、上がったよ」
リビングに行くと、瑠々が「まあ、順当ね」とでも言いたげに、高級なイチゴを口に放り込んでいた。
「Bランクねぇ。……おめでとう。でも勘違いしないで。BからAへの壁は、今までの比じゃないわよ。優美那さんは元々Aランクの地力があったから上がれたけど、アンタはここからが本当の『積み上げ』の時期ね」
「分かってる。……でも、少しだけ、紫苑様に近づけた気がするんだ」
翌日、バイト先の本屋にて。 白雪さんは、僕の胸元に新しくついた「Bランク」のバッジ(アプリ上の表示)をチラリと見て、鼻で笑った。
「……Bランク。ようやく、自分の機材代くらいは自腹で払えるようになったかしら?」
「はい。おかげさまで、次はもっと良いマイクを買うつもりです。……紫苑様、優美那さんもAランクに上がりましたね」
「ええ。あの子はよく頑張ったわ。……でも、貴方はどうなの? ランクが上がって、満足して立ち止まるつもり?」
白雪さんの問いかけに、僕は真っ直ぐ彼女の瞳を見つめ返した。 彼女は今、Aランクのトップ層。そして僕は、そのすぐ後ろのBランク。
「……いいえ。Bランクの時給が13万なら、僕はその全部を、貴方の隣に立つための『ガソリン』にします。……紫苑様、次は僕が、貴方をSSSランク(100万の世界)へ連れて行く番です」
白雪さんは一瞬、驚いたように目を見開いた。 そして、いつものように不敵な笑みを浮かべ、僕のネクタイ(バイトの制服)をグイと引き寄せる。
「……大きく出たわね、家畜の分際で。……いいわ。その言葉、嘘にしたら承知しないから。……さあ、レッスンの続きよ。Bランク相応の喉、見せなさい」
BランクとAランク。 数字の上では近づいた。けれど、白雪さんの放つオーラと、プロとしての矜持は、依然として僕の遥か先を走っている。
それでも、僕の「声」は、確実に彼女に届き始めていた。




