第21話:100曲の果て、立ちはだかる「親友」
「……98曲目。……行きます。……っ、ふぅ」
配信開始から既に7時間が経過していた。 喉は焼けるように熱く、視界も少し霞んでいる。 けれど、同接は深夜にもかかわらず9,000人を維持していた。アンチの罵倒はいつの間にか消え、コメント欄は「悠、最後まで歌え!」という応援の弾幕で埋め尽くされている。
「……99曲、目。……これで、最後、じゃないぞ……!」
限界を超えた喉から、紫苑様に叩き込まれた「腹からの発声」で声を絞り出す。 その時、画面に巨大な虹色のエフェクトが舞った。
(ピコンッ!!) 【Bランク「優美那」がギフト「応援の特大ケーキ(5,000pt)」を贈りました】
「……え、優美那ちゃん!?」
コメント欄:『優美那ちゃんキター!』『Bランク上位の優美那が参戦!?』『ガチ勢の殴り込みだ!』
画面の端に、優美那のアバターが割り込んでくる。 いつもならモジモジしている彼女が、今日は真っ直ぐに僕を見つめていた。
優美那:『悠さん。……すごい。でも、今の歌じゃ、まだダメ。……ピッチがズレてる。そんなんじゃ、紫苑ちゃんの隣には、行かせないよ?』
彼女の言葉に、リスナーがどよめく。 いつも優しい彼女の、初めて見せる「Aランク(月収20万)を目指す者」としての鋭い眼差し。
優美那:『私も、ずっと紫苑ちゃんの背中を追いかけてきた。……だから、新入りの悠さんにだけは、負けたくない。……次の「新人王決定戦」、私もエントリーしたから。……悠さん、そこで私と、本気で勝負して?』
「……。……。……ははっ」
僕は乾いた喉で笑った。 優美那ちゃんは、白雪さんの親友だ。彼女もまた、白雪さんの凄さを誰よりも知っていて、その隣に立つために血の滲むような努力をしてBランクまで上がってきたのだ。
僕へのギフトは、単なる応援じゃない。 「私を倒してから行け」という、彼女なりの宣戦布告。
「……100曲目。優美那さん。受けて立ちます。……僕が勝って、紫苑様の隣に行く。……聴いてください、僕の、今の全部です!!」
僕はラストの一曲に、今日一番の声を乗せた。 その配信を、画面の向こうで白雪さんは、いつもの本屋のカウンターで独り、微笑みながら見守っていた。
「……いい顔になったわね。……二人とも」




