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遅くなりました…
まぁ、俺のように思考に耽る者もいたがやはり発狂する者もいる。
彼らが一体どういった存在か分からないため俺も戦闘をふっかけることはしない。
まぁわりと混沌を極めたような現状で落ち着き払うのも無理のない話だ。
俺が視認しうる数でざっと1000人、その中で俺に近寄る男がいた。
あまりにその爽やかな顔に写真でも貼り付けたような笑顔の男が寄ってくれば俺は警戒をせざる得ない。
「落ちつているね」
「慌ててもつかれるし、何ならこの状況は正直滾る」
「まぁ、だから声かけたよ…君の名前は?」
「昇晃、そっちは」
「神崎氷室」
この男と面識自体はないものの俺はこの男を一方的に知っている。
剣道の試合でその奇抜な動きで全国を一瞬にしてかけ名前をはせた男。
人々は彼のことを『氷の疾風』、海外だと『アイスシューター』だそうだ。どうでもいいがカッコわりぃネーミングセンスだ。
スピードはピカ一だし、俺も注意して周りに意識を向けていなかったら懐を切っていたかもしれない。
「まあ、要求したいことも何となくだが察す。俺もそのが楽だし」
「ありがとう、何か条件はあるかい?」
「少し殺陣に付き合ってくれ」
「手加減は」
「いやしろよ」
ハハッっとさわやかな笑顔で俺に笑いかけるもんだからやりづらい。
俺にとってこれは二つの意味を持つ。
氷室の戦闘力を肌で感じる。
そして回りへの牽制。
頭がいい奴なら今の俺と氷室の会話で察しただろう。
そう、一時的な共戦、または休戦。
あえてそこは語らずにほかのやつらがどうするかを考えなくてはならない。
俺は風を意識し構えを取る。
氷室はすぅ…と腰を落としてゆきながら右の手を左腰の刀にあてがうようにする。
一瞬にして一時間の時を体感したような疲労感とお互いの気配の拮抗。
俺には柔道という丸腰同士であることに特化した型を持つ武と棒を振るうことに特化したはずの剣道。
真剣を初めて手にしたような雰囲気と威圧感ではない。が、対応して見せよう。
先に動いたのは氷室。
脱力したような右腕が突如うごめくようにして震え、直後…いや同時と言っていい鞘引きの音と空を切り裂く刃の音が二つ重なる。
二つの剣先がおれの右肩から、そして左肩からクロスするように迫る。俺は風のような動きを意識しクロスした刀の軌道をすり抜け潜り抜けるようにし氷室の懐に潜る。
すると下から刀の物打ちが迫る。
おれは刀をもち、月を意識。腕を伸ばしながら足を振り下ろし半月を描くように振るう。
それを綺麗に避けつつ、体を翻しおれに対して追撃を仕掛ける氷室。
そこから俺はサマーソルトで一瞬距離を置きつつ花で縮地と正拳突きを放つ。
腹に見事に入ったそれは氷室から一瞬自由を奪いつつ関節を極めるため腕をつかみながら飛び上がる。
そこから視界が加速を始めた。