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第17話 これってデートのお誘い?

「帰りどっか寄ってくか?」


 三学期の最終日、終業式を終え教室に残っている俺と誠士に大介が遊びに誘ってきた。


「俺はクラス委員の用事があるから、直ぐには帰れないな」


 誠士はクラス委員だから最後の片付けやらがあるようだ。


「俺も今日は教室の日だから無理だわ」


 大介と誠士は俺が教室に通っている事は知っている。気が許せる数少ない友達にはイラストの事は話している。あとは春陽と……秋月は……友達? なのか? キッカケがアレだったが気が許せるし、妙にウマが合うんだよな。大介と誠士と同じように秋月とはウマが合う。気兼ねせずに意見を言い合ったりできるし、以前感じていたような距離感も今は感じない。こういう感覚が友達なんだろうか? だとしたら、彼女の事をアイドルのような遠い存在のように思っていたのは、俺が勝手に壁を作って遠ざけていたからだ。今後はもっと視野を広げ、人との繋がりを大事にしていきたいと思う。


 そんな秋月とは教室へ行く前に待ち合わせをしている。昨日の夜、お願いがあるとメッセージを送ってきた。彼女の相談とかお願いを聞くのはなんだか気が重い。大体ロクな事が無いからだ。以前、話くらいは聞くと言った手前無碍(むげ)にもできないので、今日は相談を聞く事にした。


「そうか、じゃあまたな! 春休み中に連絡するから遊びに行こうぜ! 次も一緒のクラスになれたらいいな!」


 大介はそう言ってニカッと笑った。


「ああ、俺からも連絡するよ。誠士もこの後の片付け頑張れよ」


 二人に挨拶を済ませた俺は教室を出て秋月と待ち合わせの場所に向かった。





 このカフェで秋月と待ち合わすのは何回目だ?


 恒例の待ち合わせ場所となったビックリカメラ内のカフェの前に立ち、俺は溜め息を吐いた。過去の待ち合わせではイラストの事で問い詰められたり面倒事ばかりだった気がする。


 今日は一体何なんだろう? そんな事を考えながら店内に入ると相変わらず目立つ容姿の秋月は直ぐに見つかった。


「よう、待たせたな」


 購入したドリンクをテーブルに置き、秋月の前の席に腰を下ろした。


「で、今日はどうしたんだ?  お願いがあるって言ってたけど」


 そう俺が尋ねるが秋月は何かモジモジしている。


「なんだ? トイレに行きたいのか?」


「違うわよ!」


 デリカシーが無いわね、と怒られてしまった。


「え、あの、その……わ、私と、その……デ、デートしてみたくない? べ、別にアンタとデ、デートしたくて言ってる訳じゃなくて……その……」


 秋月の唐突なデート発言に彼女の正気を疑った。


「……秋月……お前、変な物でも拾い食いしたか? おかしな事を口走ってるぞ……」


「ちょっと失礼ね! 拾い食いなんてしないわよ! もう一回言うわよ。わ・た・し・と、デートしてみたくない? って言ってんの! 女の子に何回も言わせないでよね」


 秋月は半ばヤケになったのか大きな声だった為、周りから注目されてしまった。彼女のその容姿から、ただでさえ目立つというのにデートとか反感を買いそうな発言は止めて欲しい。周りの男共からの俺の対する視線が痛い。


「いや、別に? 面倒くさいし」


 また面倒な事になりそうな予感がする。俺の中でこのデートのお誘いは危険だとアラートが鳴り響いている。


「え? ちょっと! こんな可愛い女の子とデートできるのに面倒くさいって……アンタねぇ。だからモテないのよ」


「余計なお世話だ」


 やっぱり自分が可愛いって自覚はあるんだな。


「それに何で『デートしてみたくない?』なんだよ。絶対何かあるだろ? ダマされないぞ」


「もう……分かったわよ。ちゃんと話すから聞いて」


 最初から素直に理由を話せばいいのに、と思ったが余計な事は口には出さない方が身の為だろう。


「分かった。大人しく聞いてるから」


 秋月は溜息をひと息吐いて発言の意図を話し始めた。




 秋月が話した事を要約すると、現在執筆中のラブコメでデートシーンを書くのに取材をしないと書けないらしい。一人では取材にならないから相手役として俺に白羽の矢が立った、という訳だ。


「話は分かった……が、何で俺が相手なんだ? 秋月とデートしたい奴なんて巨万ごまんといるだろ?」


「他の男子からは下心がありそうな、イヤらしい目で見られたりする事が多いから……二人きりで出掛けるとかは何か怖いの。今まで男子と二人きりで出掛けた事が無かったし……その点アンタは普段、そういう目で私を見ないで接してくるでしょう? それに二人きりで出掛けるような仲の良い男子もいないし」


 秋月は見た目も良く、スタイルも良いから、そういう目で男子が見るのも仕方ないとも思う。彼女にとっては迷惑な話だが。

 ……にしても、彼女が一回も男子と二人きりで遊んだ事が無かったとは驚きの事実だ。


「まあ……俺にとって秋月は、面倒事ばかり持ち込んで来る認識しかない気がするな。今日みたいに」


「デートを面倒事とか、その歳でどんだけ枯れてんのよ……アンタは……」


 秋月が呆れた様に苦笑した。


「と・に・か・く! アンタは無害そうだから相手にうってつけ、だからデートするの! いい? 分かった? で、でも、デ、デートの()()だからね! か、勘違いしないでよね!」


 無害だからうってつけとか言わて喜ぶべき事なのか疑問だが、フリとはいえデート相手に選ばれたのは光栄に思うべきだろう。だからデートの()()、承諾する事にした。


「相談はいつでも受けるって言ったし、デートの取材に協力するよ」


「本当⁉︎ 良かった……受けてもらえなかったら、デートシーンを想像で書くしか無かったから……ありがとう」


 俺としては、秋月が面白い小説を書く為の協力をする事に断る理由は特にない。こうして喜んでもらえるし。


「で、具体的に何かあるのか? 取材したい場所とか」


「私、水族館に行きたい!」


 即答だった。


「それって、秋月が行きたいだけじゃねえか! 取材なんだろ? ちゃんと考えろよ」


「えーと……動物園でもいいよ? 私、生き物は魚類から爬虫類まで大好きだから」


「違う、そうじゃない! 秋月の行きたいとこじゃなくて取材が必要な場所の話だ」


「えー、じゃあ水族館でいい。動物園も行きたいけど、水族館の雰囲気は取材しないと書けそうもないから。あ、言っとくけど私が行きたいだけじゃなくて、ちゃんと小説にも書くからね」


 自分で行きたいって言ってるし。秋月って頭も良くて優等生だが少し抜けてるとこあるよな。だから美人で優等生でありながら、こうして接してみると身近に感じるのかもしれない。


「じゃあ、水族館って事で決まりだな。俺も水族館なんて小学校の課外授業で行ったきりだし、どこの水族館にするか……」


 俺はそう言いながらスマホで水族館を検索する。


「えーと……入場料結構高いんだな。二千円〜三千円くらいするし」


 俺はイラストで稼いではいるが高校生には三千円でも大きい金額だ。


「……あ、ここなんてどうだ? 近いし入場料七百円だって。臨海公園水族館」


 秋月にスマホを渡し見てもらう。


「……うん、ここにしよう。海沿いの公園内だしデートには最適かも。あ! 観覧車もあるんだ? これは乗ってみたいかも……」


 結局、水族館じゃなくても秋月が行きたいところが取材先になるようだ。


「取材なんだからな? 目的忘れるなよ」


「分かってるわよ……それにしてもアンタは本当にデートとか興味が無いの? フリとはいえデートなんだよ? なんか全然嬉しそうじゃ無いし、本当は私と出掛けるのは嫌?」


 急にしおらしくなった秋月は項垂うなだれ、上目遣いで俺の顔を覗き込み確認してきた。


「そ、そんな事ないって! 俺もデートなんてした事ないし、ちょっと恥ずかしかっただけで嫌なんて絶対ないから! そ、その……むしろ嬉しかった……かな?」


 美少女の上目遣いは反則だ。ドキドキしてしまい思わず目を逸らしてしまう。


「そう……なら良かった。私も楽しみにしてるからよろしくね」


 こうして秋月と初デート? をする事となった。まあ……本音を言えば凄く楽しみではある……かな?

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