秋
『秋』
秋は、しずかに
しのび足でやってくる
うるさいせみの声も聞こえない
しずかな、こおろぎの声が
どこからともなく聞こえてくる
秋は、美しいけれども
なんだかさみしい
『えん日』
ピョンピョン
ピューン
おもちゃのバッタが
とびあがった
「ひゃーっ、気持ち悪い」
女の人が急いで通り過ぎていった
バッタを拾い上げてみると
足が四本しかない
「インチキバッタ」と
小さな声でいってやった
『雨』
ポツッ
手のひらに最初の雨が
落ちた
続いてポツ、ポツ、ポツ、ポツ
たちまち地面が水にぬれた
空からたくさんのつぶが落ちてくる
急いでかさを取りに行った
『落ち葉たき』
サッサッサッ
ママが落ち葉を
はき集めている
落ち葉の山が
だんだん大きくなっていく
全部集めると
とても大きな山ができた
火をつけたらぼーっと音がして
葉っぱがパチパチといきおいよくもえていった
ママがぼうで
落ち葉の山にトンネルをつけた
トンネルの中で
赤や青や黄色のほのおが
重なり合っておどっている
赤のほのおはかえでで
黄色のほのおはいちょうかな
でも、青いのは何だろう
けむりの間から
けむそうなママの顔が見えた
『いちょう』
いちょうの葉っぱが
風といっしょに飛んでいる
サッ、サーサー
小さなすなぼこりができた
すなの上を
いちょうの葉っぱが
流れるように飛んでいる
『青い風』
私は別の秋に住んでいるので、もうすぐ帰らなければなりません。
私の住む秋は、いつまでも暑かったり、急に寒くなったり、ダニが繁殖したり、台風が来たり、雇用状況が悪かったり、野菜が異様に高かったり、出かけようとしたらスカートの裾がドアに挟まって破れてしまい、他に着る服がなくて詰んだり、そんなことばかり起きるので、あまり住みやすくないのです。
私は落ち葉の中に隠れて、揺れる炎にまぎれて、女の子と魔女が遊んでいるのを見ていました。二人とも笑っていたので、いつまでもこんな時が続けばいいと思いました。
私は元気です。魔法の力はあなたたちよりもだいぶ弱まってしまったけれど、こうして元気に飛び回っています。
ひとこと伝えたかったけれど、私はもう、行かなければなりません。私の秋を待っている子供たちがたくさんいるのです。
その時、女の子が落ち葉の間から私を見ました。少し驚いたように、でも嬉しそうに、私を見てくれました。それで十分です。私も微笑み返しました。女の子にはきっと、私は青い落ち葉のように見えていたでしょう。
私は飛び去りました。青い風になって、秋から秋へと、長い時をこえていきました。
前半の詩は母が小学生の時に書いたもの。
『青い風』は、私が書きました。