後:
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
「起きてー!起きてー!『月曜』さーん!」
誰かに呼ばれる声。身体を何度も叩かれる。
俺は、ゆっくり目を開いた。
「良かった!起きた!ほら、もう直ぐ『月曜日』ですよ!良かったー間に合わないんじゃないかと思った...」
存在するべき時は、自分で知っている。
起こされたのではなく、起きたのだ。
目の前にいるのは、頭が『日』の人。
『日曜日』だ。
『火曜』よりも小柄で、やけに豪勢な服を着ている。坊ちゃま、っていう感じだ。
声は俺よりも若く聞こえる。
「そういえば!もう直ぐ、”あれ”も来るよ!早くしないと!」
「何だ?”あれ”って。」
「あれだよあれ!覚えてないの?…そうかー...そうだったね。君たち『月曜日』は、毎週殺されちゃうからね...知らない、だったね。思い返してみたら先週もそうだったよ。」
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
また、あの鐘。
「君と話せるのも、ここまでだね。会ったばかりだけど、お別れ。さよならだよ。」
「質問に答えろ。」
「もうじき...もう間も無く分かるよ。そうだね…君に最後に言うとしたら...早く...
”にげろ”
あの赤い文字が、頭をよぎる。
あの恐怖が、近付いて...
『日曜』が、ゆっくり霧に包まれる。
その後ろから、
黒 い 塊
とてつもない速度で近付いてくる。
よく見ると、人型で、手には大きな刀。
どんどん俺に近付いて、近付いて...近付いて…
ヒッュ
目の前を血が飛ぶ
瞬間痛みが走る
反射的に避けた
刀は顔をかすめた
何かを感じた
逃げた
逃げた
それは本能だ
理由なんてわかるか
逃げた
振り向かず ひたすら
足が止まろうとしない
走って
走って
走って
頭が考えることを止め
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
意識が 戻った。
俺の足は 止まった。
逃げる気も 失せた。
俺の頭にあるのは、開放感。
周りは白い!白い!
逃げ切った!俺は逃げ切ったんだ!
目から赤くない、温かいものが溢れた。
「月曜日さん」
「『火曜』さん!俺、逃げ切ったんですよ!”あれ”から逃げ切ったんですよ!」
後ろを振り向く。
...
「それは、良かったですね。」
縦に走る一本の線。風を切り裂く鋭い音。
そこにいるのは”あれ”
『お前!』
声が出ない のどを切られた
この世のものとは思えない激しい痛み
後ろに倒れる身体...
...
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
「残念、でしたね。」
『火』の顔。
「やはり、運命でした。条理でした。避けられない、残酷な...。申し訳ありません、私は何も出来ません。このまま貴方を看取って、また火曜日を始めるだけです。」
俺は無意識にポケットに入った何かを掴み取り
「今後も続くでしょう。いつまでも。いつまでも...」
血の付いた指でその物に文字を書く
「次の『月曜日』は、逃げ切れるのかな。」
『 に げ ろ 』
鐘の余韻が鼓膜を震わせ、白い部屋にまた血が染まる。
大きく振りかぶられた刀の下で、俺は死
...
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