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【月曜日は今週も殺される】
「血が...血が出てる...痛みを感じない...。寒い...寒い...」
鼓動はひっきりなしに打ち続け、速く、速く...
頭が痛い。身体が動かない。
俺、死ぬのか...?
…
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
気付いた時、俺は一人だったんだ。
独りぼっち、白い空間の中で。
何故か、自分が誰だかが分かったんだ。
俺は、『月曜日』だ。
辺りを見回す。
何も無い、虚無の世界...
…に、1つ赤く映える箇所。
近づいて見てみた。
流動性の
ドロッとして
温かい
真っ赤な、真っ赤な……血。
「ウゥッ!」
思わず内容物が、口から飛び出しそうになった。
周りが白すぎて、その赤すぎる赤は鮮明さを露わにしていた。
と、その赤の傍に白い紙。
一部が血に染まって赤くなっている、しわくちゃの紙。
俺はその紙を手に取り拡げ、裏表を確認する。
そこには、
『 に げ ろ 』
その3文字だけが、隣の赤と同じ赤い文字で殴り書きされていた。
恐ろしい...
寒気を感じた。
血で書かれているから。だけでなく、
その形崩れど、力強い、猛烈な意思を持った...文字。
「君の族は”また”殺されたんだ。」
後ろから突然の声。
俺は直ぐに後ろを振り返る。
そこには、頭が大きな『火』の文字の形をした...人。
「殺された?」
「そう、殺された。『月曜日』は殺されたんだ。そういう運命なんだ。気の毒に...」
殺された?運命?どういう事なんだ、俺は死なないはずだぞ。
何故か分からない。俺の頭の中に、ここで殺されるという本能、記憶は無い。
俺は、『月曜日』。月曜日を象徴する、存在。
俺がここに居ることによって、月曜日は人類の中に存在する。
俺が消えるなんて事は無い。月曜日が終わったらまた、存在するべき時にここに戻って来るのだ。
そのように、俺の本能と無意識が言っている。
「俺は、殺されるはずなんてありません。『火曜』さんだって、そうでしょう。」
「私は、そう。火曜日が来る限り、ここに存在する。でも、君たちは違う。殺されるんだ。」
「それは違います。『火曜』さん。俺たち『月曜』も、月曜日が来る限りここに存在し続けます。」
「残念ながら、人類は貴方の存在を許さない。」
「何故、許されないのですか?」
ゴォォォォン...ゴォォォォン...
...
「おっと、そろそろ時間みたいだ。もう直ぐ『水曜日』だ。そういえば、なんで君が『火曜日』に存在するんだ?」
火曜の身体が白い霧に包まれていく。
「分かりません。」
俺の目の前も黒く、暗くなっていく。
「じゃあ、また会おう。来週。”生きていたら。”」
俺の意識はそこで途切れた。