僕のいる世界
始めまして。お暇でしたら是非お付き合い下さい。
多く語るほどの内容もありませんので、
どうか【僕】のお話を聞いて下さい
昼食の弁当を食べながらずっと僕は考えごとをしていた。
それは考え事ですらないかもしれない。ただ魚の小骨が喉に刺さったような。
何かがおかしいけど何が変かもわからない。もう長いことずっと小骨は喉に刺さっていた。
「どうしたよ難しいことを考えて。次の授業のことでも考えていたのか?」
僕の友人が僕に話しかけてきた。僕はそこまで人付き合いが得意でない。
だからこそそんな僕とずっと友人でいてくれている彼に僕はずっと感謝している。
「いやー何か変だなって」
「何が変なんだ?先生がハゲでかつらでもかぶっていたのか?」
彼はゲラゲラ笑いながら答えた。こんななんでもない日常が僕にはとても大切だった。
「んーなんでもないや。よくわからないしどうでもいいことなんだと思う」
「そうか。でも本当に困ったら俺に言ってくれ。勉強と金以外なら出来るだけ助けるからさ」
彼は笑いながら言った。
でも彼が本気で僕のことを心配してくれていてあえてそれ以上突っ込まずにいてくれていることがわかった。
「ありがとう。じゃあ次の授業でわからないことが出来た時教えてもらうよ」
僕は冗談で言ったのだが彼は非常に嫌そうな渋い顔をした。
授業が終わって放課後となった。がやがやした雰囲気が僕は昔とても苦手だった。
今は大丈夫だけど世界は自分一人と周りで分けられてると思ったからだ。
でも今はそんな心配をしていない。
「今日はどこいくよ?」
彼が僕に話しかけてきた。お互いの日程をある程度理解していて、尚且つほとんど断らないため、今日暇?でなくどこいく?になるのである。
「ゲームセンターに行こうか。今日は体育無かったから少し体動かしたいし」
「いいぜ。今日は宿題も無かったからお前んちで勉強する必要もないしな」
「僕のうちで勉強するのは決定なんだね」
「お前俺が一人で勉強できると思ってるのか?」
「ごめん僕が馬鹿だったよ」
「おう。だからこれからも頼むぜ俺の親友」
二人で軽口をたたきながらゲームセンターに行く。
玄関に向かい、シューズを脱いで下駄箱にしまい靴を出して履く。
僕は特に問題無かったが彼は先生に見つかって怒られていた。いつも怒られているのにまったく反省しない彼は凄いと思う。見習う気は無いが。
「それで今日はなんで怒られてたの?」
僕は尋ねた。
「んー忘れた。もっと早く聞いてくれ。出来たら怒られた直後に」
これを冗談で言ってないのだから大したもんだ。以前記憶力とかの病気かと本気で心配もしたが記憶力は僕より良いし病院でも問題なかった。
ゲームセンターに二人で歩いて行く。自転車があれば良かったが僕の家はそんなに遠くないし彼はバス通学だ。バスでもよかったがこのくらいなら歩いても15分ほどでつく。
途中の電気街のショーケースに沢山のテレビが置かれて全部別の番組を流していた。
「日本の地球温暖化が進みこのままでは北海道が……」
「世界の動物ショー。今日の動物はー……」
「本日日本時間午後1時にて外国の王子の初子が誕生しました。それについて日本の大使館は……」
「本日未明山奥に熊が出没しました。被害はまだ出ていませんが……」
テレビのニュースやらを見ていてさっきの喉の小骨が大きくなった気がした。何かがおかしい。でも何かわからない。何かあるはずなんだ……
「どうした?足止めて、なんか面白いものでもあったか?」
彼が僕に聞いてきた。どうやら考え事をしていて足が止まったようだ。
「ああごめん。なんでもないよ。行こうか」
僕は考え事を止めて急いだ。それより今は友人の時間が大切だ。
「今日はダンスゲームでジュースどっちがおごるか決めようぜ」
「いいよ。ジュースじゃなくてたこ焼きとかでもいいよ。踊って小腹が空いた時用に」
「吐いた唾飲むなよーたこ焼きご馳走になるからなー」
そうして僕と彼はゲームセンターに急いだ。
ゲームセンターで遊び気づいたら時間も五時を回った。いい時間となったので彼とも別れ僕も家についた。
結局ダンスは僕が勝ちたこ焼きを奢らせ、悔しがった彼をからかった。
「なんで彼は運動神経良いのにリズム感は微妙なんだろうね」
独り言を言いながら僕は自分の家を目指した。
「ただいまー」
「お帰り。手洗っておけよ」
家に帰ると父が僕を迎えてくれた。
今日は会社を早く帰る日だったようだ。
「ただいま父さん。今日は早いね。ご飯どうする?」
僕は手を洗いながら父に尋ねた。
「俺が作ろうか?それともどこか行きたい?」
「今日は父さんが作って欲しいかな。あまり作ってもらうことないし」
「そういうと思ってもう材料買って仕込んでる。8時くらいでいいよな」
「全然構わないよ。それまでちょっと部屋で遊んでるね」
そう言って僕は部屋に行った。
部屋の外から父が鼻歌を歌いながら料理のする音が聞こえる。仕事も家事もなんでも出来て僕の自慢の父親だ。恥ずかしいから口が裂けても言わないけど。
そのままごろごろと僕は本を読みながら時間を潰した。
夕飯が終わって父の変わりに僕が食器を洗い風呂にも入った。後は寝る前に勉強して寝るだけだった。
勉強はそこまで好きじゃないが毎日決まった時間にしていたら癖になっていた。毎日少しがんばるだけでテストの点が増えると考えたら割と楽しくすらある。
勉強もあらかた終わり、残り少しとなったあたりで集中力が切れた。もう少しだし適当でいいかと僕はラジオを付けて勉強を始めた。
「本日日本時間午後1時にて外国の王子の初子が誕生しました。日本の総理大臣もお祝いに……」
そういえば昼でもそのニュースしていたな。
そして僕はまた小骨が大きくなったような。もう1歩で何かがわかってしまうと考えた。
「何か…大切なものがない……」
そして僕はついに気づいた。気づいてしまった
「母さんが……女性がいない……?」
頭の中に女性という知識はあるのに、僕は女性を見たことが無かった。共学のはずの学校に女性がいず、また僕の母親を僕は存在すら知らない。
それ以前に、僕に母親がいないことも僕学校に女性がいないことも【僕は変とは今まで一度も思わなかった】。それが何より僕は恐ろしかった。
「明日もっと調べよう」
僕は決意し、そのままベットに篭った。自分にもよくわからない事態と恐怖でなかなか寝付けなかったが。それでもベットの魔力に僕は負け意識を沈めた。
僕は特に夢を見ること無く朝起き、適当に食パンを焼いて食べ、そのまま学校に行って授業を受けた。何も知らなかったら何も思わない生活。
だが僕は違和感に気づいてしまった。
僕の唯一の友人にも話そうか悩んだが、その結果でどうなるかわからないから結局止めておいた。もう少し様子見をしてからまた考えることにした。
彼が実は悪いやつで黒幕のような存在ならそれでも僕はかまわなかった。彼に騙されてなら僕はそれでもいい。最悪なのが彼も知って彼に何かの被害が起こること。それだけは避けたかった。
「……………ム………」
彼が僕に話しかけてきた。が、ちょっと考え事をしすぎて僕は聞いていなかった。
「ごめん聞いてなかった。なんだって?」
「んーいや先生がはげでカツラでも見つからなかったかって話」
どうも昨日の続きの話のようだ。
「そんな先生いたら是非とも朝礼の時間にヅラ取りたいね」
「そしてヅラを被って全力で逃走。明日の町内新聞のヒーローだな」
二人で馬鹿笑いをした。
授業が終わって放課後となった。何か嫌な気持ちになる。
世界は自分一人と周りで分けられてると思ったからだ。
「今日はどこいくよ?」
彼が僕に話しかけてきた。お互いの日程をある程度理解していて、尚且つほとんど断らないため、今日暇?でなくどこいく?になるのである。
「ゲームセンターに行こう。今日は体育無かったから少し体動かしたいし」
「いいぜ。今日は宿題も無かったからお前んちで勉強する必要もないしな」
「僕のうちで勉強するのは決定なんだね」
「お前俺が一人で勉強できると思ってるのか?」
「ごめん僕が馬鹿だったよ」
「おう。だからこれからも頼むぜ俺の親友」
二人で軽口をたたきながらゲームセンターに行く。
僕は特に問題無かったが彼は先生に見つかって今日も怒られていた。
怒られてすぐに僕は聞いた。
「それで今日はなんで怒られてたの?」
「んー忘れた」
「もっと早く聞けって言ったからすぐ聞いたのにそれでも忘れるのかよ」
僕は笑った。
「あれ?そんなこと言ったっけ。すまんな教師が俺を怒るのはお互いのライフワークだから当たり前になりすぎてな」
待ってろよ」
そう言って友人は僕のためにタクシーを呼んでくれて運転手にお金を握らせた。
「変わりに払っとくからそいつのことお願いします。それだけあれば足りると思いますので」
そういって彼は僕を見送った。後から考えたら僕の家に行くのだからお金はなんとかなるだがそれでも彼は僕のために慌てていたからだ。後でお金を返さないと。返せたら
タクシーで帰った僕は既に家にいる父に体調が悪いから夕飯はいいと断り部屋に戻った。
正直食欲も無く、すぐに眠りたいがあることを調べないといけない。いや確認しないといけなかった。
昨日の勉強していた時間にラジオを付ける。念のためノートに僕は同じ言葉を繰り返し書いた。
初子…初子…初子…
そして昨日と同じ時間になった。
本日日本時間午後1時にて外国の王子の初子が誕生しました。日本の総理大臣もお祝いに……
わかっていたことだが、それでも頭が真っ白になった。僕は床に倒れこんだ。
「なんだよこれ……どこまでが現実なんだよ……」
違和感に気づけば気づくほど僕は大切な日常が一番怖いものと気づいてしまった。
毎日が繰り返されていた。
僕には昨日の記憶しか無く、それ以前はなんとなくそうだったという思い込みの記憶で、
しかも昨日の記憶もさっきまでうすぼんやりしていて同じことをしていることに気づかなかった。
よく考えたら僕はいつから学校に行っていていつまでいけばいいかもわからない。自分が何歳で何年生なのかもわからない。
気づいたら僕の日常は全て作り物で空っぽになってしまった。昔感じたと思われる世界でただ一人自分だけのこの嫌な時間を僕は今身近に感じている。
朝起きて僕は朝食を食べずに学校に行く。父は既に会社にいっていて、弁当だけ家においてあった。だがここでも変な話なのだ。昨日僕が食事を取らなかったから父も軽食ですましていて。
朝も料理をしていない。洗い場に食器が一枚もなく。調理器具を使った痕跡も無いのになぜ弁当が出てきているのか。
僕は授業を受ける。全くおなかの空かない自分の体は、ストレスのせいなのかそれとも別の何かなのか考えるのが恐ろしかった。
昼休憩になったら友人は僕の元にかけよってきた。
「おい大丈夫か。今日はやけに体調悪そうだぞ」
友人は僕に話しかけてきた。昨日のことを忘れているようだ。いや忘れているのでなく僕が無かった記憶を作り出しただけなのかもしれない。
「大丈夫だよ。ただちょっと食欲無くてね。ところで昨日僕はどういう行動してた。ちょっと教えて欲しいんだけど」
僕は質問した。もしかしたらという希望にかけたかった。彼だけでも僕と同じような状況になればもしかしたらと思った。だが
「大丈夫か。調子悪くないならルパンごっこでもするのか?ってつっこんでやりたいがマジみたいだから答えるが」
そういって彼が答えたのは僕の知らない日々だった。世界が変なのでなく変な世界が普通で普通な僕がこの世界の異物のようだった。
昨日だけでなく一昨日もその前も彼は答えてくれた。やっぱり僕の知らない日々だった。性格には僕も知っている日々だけど僕はそれをいつと判断出来ない。
最後にこれだけ聞いてみようと思った。
「ねぇ。世界が……」
その後のことを言おうとしても何も言えなかった。いや口は動かしているし声も出ている感覚はある。でも僕の口から聞こえるのは機械のエラー音のような。獣のうめき声のような。そんな音しか聞こえなかった
「どうした。何か質問あるなら全部答えるぞ。それでお前が安心できるなら」
その気持ち悪い音すら彼には聞こえてなかったようだ。
「そうだね。ちょっと体調悪いから今日は早退するよ。ごめんねゲームセンター行けなくて」
「何言ってるんだよ。良いから休め。体調良くなったらいくらでもいけるんだから。教師呼んでくるから待っててくれ。俺の口で言っても逆にズル休みにしかならないからちょっと連れてくる」
そういって彼はわずか1分ほどで、物理的に教師を引っ張ってきた。教師も困惑顔だったが僕の体調が悪くて彼が心配してるだけと知ったらほほえましい顔をしていた。
つまり彼のことをいつも怒ってるけど本当は心配している【という設定】なのだろう。
僕はそのまま学校を出て町を歩いた。気づいてしまった後頭痛が酷く、そして新しいことに気づいた。僕はこの時間のこの世界を【既に知っている】。
いったい何を知っているのかわからないが、僕はこれを知っているようだ。この時間、この人が来る。この人があっちに良く。あの番組が流れる。
何故わかるかわからない。頭痛が止まった。頭がすっきりした。そして僕は限界だった。
この世界に僕はいてはいけない。強い脅迫概念と世界にただ一人という恐怖に僕は押しつぶされた。
そのまま僕は【今日この時間ここに来ることを知っている車】の通る道に飛び出し、そのまま身を任せた。
昼食の弁当を食べながらずっと僕は考えごとをしていた。
ご参加ありがとうございます。
リハビリもかねて短編を書かせていただきました。
ご要望が多ければ続編も考えてますが、たぶん無いので気にしないでください。
もし5人くらいでも呼んで下さったら嬉しいです。そのうち1人でも気に入って下さればそれだけで救われます。
もし退屈な時間でしたら申し訳ありません。
再度繰り返しますが、どんな方も貴重な時間をささげてくださってありがとうございます。
読んでくださる方がいるだけで私は救われます。




