表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

第十七話 答え

昨日に続いて連投です。その代わり、文字数は少ないですが、。

「雪陽さんは、異性として私の事をどう思ってますか…………?」


 目の前にいるフィリアが発した言葉。それは、返答次第ではフィリアとの関係が大きく揺らぎかねない、重大で単純な質問だった。


 頭の隅に散り散りになっていた思考が一瞬にして集約される。俺がフィリアの事をどう思っているか、そんなの一つしかない。


「すいません、やっぱり今のは聞かなかったことにしてください……」


 喉元まで出かかった俺の答えは、口から発せられる寸前でフィリア自身に遮られてしまった。


「……なあ、俺たちの今の関係って、一体なんなんだろうな」

「さあ。目的地のない旅を共にする他人、ですかね」


 フィリアが少し笑う。しかし、表情とは裏腹に、漂わせた雰囲気は最初に出会った時のような、ひどく寂しいものだった。


「二度目のお風呂なので、もうのぼせてきちゃいました。先に上がりますね」


 フィリアが湯船から出る。扉へと歩いていくフィリアの背中が、なんだかすごく遠ざかっていくように感じて、俺は咄嗟にその手を掴もうとした。だが、水面から出たところで俺の腕は止まってしまい、フィリアはそのまま風呂場を後にした。






 フィリアと時間差でお風呂を出て、二階の部屋に戻ってきた。


 部屋に入ると、既にフィリアは就寝用意を済ませていて、俺の支度を待っている様子だった。今日は俺がソファで、フィリアがベッドの日だった。


「なあ、フィリア。今日一緒にベッドで寝ていい?」

「えっ、ええっ!! どうしたんですか、雪陽さん!? もしかして、下でお酒でも飲んできたんですか?」


 お風呂上がりでほんのり朱を差していたフィリアの頬が、さらに赤みを増した。


「飲んでない。たまにはいいだろ」

「いいだろ、って……でも、このベッドで二人で寝たら、狭くて体ぶつかっちゃいますよ?」

「別に大した問題じゃないし」

「でも……」

「あー……ごめん。やっぱりソファで寝るよ」

「あっ、待ってください! イヤってわけじゃないんです。でも、いきなりすぎて心の準備が……」

「なら、準備が出来るまで待つから」

「本当に今日は雪陽さん、どうしちゃったんですか……」


 多少戸惑いの色を見せながらも、フィリアは深呼吸を何回かした後、ベッドの右側に体を寄せてくれた。ベッドに入ると、淡いセッケンの香りがした。


「寝てる途中で落ちても知りませんよ」

「それを言うなら、フィリアの方だろ。お前、昨日もソファから落ちてただろ」

「私の方が早く起きたのに、なんで雪陽さんが知ってるんですか!」

「やっぱり落ちてたんだ」

「あっ……もう、雪陽さんなんて知りません!」


 フィリアが拗ねて、反対側を向いてしまった。ミスった。これでは話にならない。


「こっち向いてよ」

「雪陽さん、私の方見てます?」

「ああ。フィリアの顔が見たいし」

「もう、なんで今日はそんなに積極的なんですか……」

「わからん。俺が聞きたい」


 きっかけは朝のシャインの発言だろう。でも、多分それだけじゃない。


 月明かりの中、さっきよりもさらに頬を赤くして、フィリアがこちらに向き直った。十センチ先のフィリアと視線が何度も交錯する。


「フィリア」

「な、なんですか」

「俺たちって、他人なの?」

「えっ」


 さまよったり俯いたりしていたフィリアの瞳が俺の目を捉えた。それでも、目を逸らすことなく続ける。


「さっきフィリアが「旅を共にする他人」って言ってたから」

「でも、私たちって、それ以外の言い方に当てはまらないといいますか……」

「でも、俺はフィリアと他人でいるのが嫌なんだ」

「えっ、それはどういう」


 恥ずかしがるな、照れるな、俺……!!


「だから、俺は…………俺はっ」



「フィリアちゃーん、まだ起きてるー?」



 浅い呼吸をして、「す」の音が口から発せられようとしたその瞬間、ドア越しにシャインの声が耳に届いた。


「すいません、ちょっと待っててください」


 フィリアがベッドから出て、ドアの方へと手探りで歩いていった。シャインのやつ、なんでっ、なんで今このタイミングなんだよおぉっ!!!


 これ以上ないチャンスを潰されてうなだれていると、フィリアがベッドに戻ってきた。


「……何だったの?」

「シャインちゃんの部屋に服を置き忘れてしまっていて、渡しに来てくれました」

「そっか」

「それで、さっきの続きは……」

「いや、なんでもない。寝るわ、おやすみ」

「えっ、あっ、おやすみなさい……」


 今から仕切り直して言える訳ないだろ、くそっ……


 俺は逃げるようにフィリアに背を向けると、多大なるもやもやを生じさせたまま、一夜を明かしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想、誤字脱字の指摘などがありましたら、感想ページの方によろしくお願いします。評価ポイントも付けて下さると、ありがたいです!
感想ページはこちら

完結済!こちらもよろしくお願いします
インフィニティ・ライフ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ