2-2.この世界、初の誕生日
パンッ!
突然、そんな音が響き、俺はベッドから勢いよく体を起こす。
「な、なに!?」
周りを見ると、メイドのリミさんがニコニコ笑いながら立っている。
「驚きました?今日は5月25日!メティスさまの1歳誕生日なので、
ちょっとしたサプライズです♪」
リミさんは俺の専属メイドみたいなもので、結構気楽な関係だったりする。
ていうか、この世界にもクラッカーってあるんだな…。
「びっくりしたよ…。でも、ありがと。」
ありがとうと言うのは少し恥ずかしいが、祝ってもらえたのは素直に嬉しい。
「メティスさまが喜んでいただけたなら幸いです。
今日は夕食の時に、誕生日会をするそうですよ。
ウェルト様とミリナ様がそう仰っていました。」
そうか。やっと1歳か……。
この世界に生まれて一年。まだ知らないこととかも多いけど、頑張るか…。
そう思いながら、何だかんだで誕生日会を楽しみに1日過ごした。
夕方___
コンコンコン。ノックの音がする。直ぐに扉が開けられる。
「メティスさま。夕食ですよ。いよいよ、誕生日会ですね。」
「うん!楽しみ!」
部屋を出て、長い廊下を歩く。
リミさんが俺の歩幅に合わせてくれてるのを見ると、
少し申し訳なくなる。まぁ、俺が小さいから仕方ないか。
「さぁ、着きましたよ。どうぞ、お入りください。」
リミさんがそう言い、扉を開ける。
俺が中にはいると同時に、パンッ!っと朝の何倍も大きい音が響く。
「「メティス!誕生日、おめでとう!」」
「「「メティス様!誕生日、おめでとうございます!」」」
父さんに母さん、メイドさんたちにそう言われる。
「えっと、、ありがと!」
素直に嬉しくなる。
前世では家族のことに精一杯で、自分のことなんか祝う暇も無かったしな。
その後は皆にプレゼントを貰った。
メイドさん達からは、豪華なケーキととっても綺麗な花束を貰った。
母さんと父さんからは、可愛い人形と絵本を貰った。
その後も皆でご飯を食べて、楽しい夜を過ごした。
前世ではこんなに幸せなことは無かったな。
家族に、メイドさんに誕生日を祝ってもらって…。
今世は精一杯、幸せに生きよう!
そう決意を固めた日だった。
そんな日から3年後。___
4歳の誕生日会をしてもらい、幸せな一日を過ごした。
その次の日。
父さんから夕食の時に、
あぁ、そうだ。メティス、食べ終わったら後で執務室に来い。
ちょっと用事があるんだ。」
と言われた。
その時は普通に返事を返したものの、用事ってなんだろう?
執務室への廊下を歩きながらそう考えていた。
結構時間が掛かったが、執務室の前に立つ。
コンコンコン。ノックすると、すぐに返事が返ってくる。
「メティスか?入っていいぞ。」
扉を開け、中に入る。
よくよく考えてみると、執務室に入るの初めてだな。
執務室はとても綺麗に
整理整頓されていた。一カ所を除いて。
「父さん、用事ってなに?…ってその紙の山、どうしたの…?」
父さんが座っている前の机には、大量の紙が積まれていた。
そんなに忙しいのか!?ちょっと父さんが心配になってくる…。
「ああ、これは気にしなくていい。いつもの事だ。
で、用事なんだが、今度の6月1日の
アルテス王国貴族会議会の子供の御披露目会で、
メティスも参加させようと思っててな。
あぁ、毎年6月1日のアルテス王国貴族会議会は
各貴族の子供の御披露目会もセットになってるんだ。
メティスももう4歳だし、いいんじゃないかと思ってな。」
そうだったのか。ちなみに、アルテス王国貴族会議会というのは
アルテス王国の王と貴族が王都に集まり、
各地方の状況報告・国全体の状況報告&確認・今後の国の方針の決定
などを行う、年2回の重要な会議のことだ。
毎年、6月1日・12月1日に行われている。
「御披露目会?大丈夫だけど…何すればいいの?」
「そう緊張することはないさ。ステージがあるから、
そこで軽い挨拶をするだけだ。今年も多分、
4家位は御披露目会をするだろうし、いい友達が出来るかもな。」
父さんが笑いながらそう言っている。友達か…。
前世では、ろくにいなかったからなー…。友達とか、うまくできるのか?
「そんなに簡単に友達とか出来るの…?」
「大丈夫だろう。相手も大体、4~6歳くらいだ。
それに、今から貴族の知り合いがいると、将来楽になると思うぞ。
貴族同士の関係も大事だからな。」
「そう?じゃあ、とりあえず頑張ってみるよ!」
「おお!名門、フェアルティ家として恥の無いようにな!」
父さんが笑いながらそう言ってくる。
「父さん…。変なプレッシャーかけないでよ‥。」
「ハハッ。メティスなら大丈夫さ。」
その後、父さんと少ししゃべったあと、
そのまま部屋へ戻って、ベットに入った。
御披露目会か…。緊張してきたな。
せめて、父さんたちに恥をかかせないように、
友達くらい作れるように頑張ろう!
そう決意し、そのまま眠りについた。
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