7/10
6
嫌な『雨』が降っていた。
滴り落ちる汚らわしいこの水は通常、大通りより路地裏の方が多く降る。
今日は大通りまで酷い『土砂降り』だ。
こんな日は身体が軋む。
俺の様な半分機械で出来ている奴にとって、第七階層は住み易い場所とはいえない。
もっとも、他の場所を知らないのだが。
痛みを感じる訳ではないが、こんな日は身体中が劣化した様に感じてだるい。
ガタがきてるのだろう。
この身体のせいで、他人より少々長く生き過ぎた。
この『雨』のせいで、思考まで後ろ向きになる。
仕事に集中しろ。
標的は目の前を歩いていた。
奴の帰路は把握している。
二つ目の路地を曲がる……曲がった。
路地には他に誰もいない。
声帯をゴツい声から可愛らしい女の声色に変え、標的の背中に声をかける。
「……失礼ですけど」
愛想よく振り向いた奴が、ぎょっとした顔をする。
…そりゃそうだろうさ。
標的の眉間に穴が空き、声もなく倒れた。
声をかけたのが若い女じゃなく不細工な大男で悪かったな?
銃を懐に仕舞い、路地を抜け通りに出た。
……クズメシでも喰いに行くとしよう。