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5


あれから半年が過ぎた。



その間俺は二回ほど仕事をこなした。


仕事量が少ないと感じるかもしれないが、倹しく暮らせば充分な稼ぎだし…


なにより精神衛生上、“ハイエナ”の顔を拝むのは極力減らすに限る。



俺とは逆に“子猫”は頻繁に仕事を請け、掃除屋の腕を上げていた。




時折、俺の部屋に上がり込んでくる。


そういう時は大抵、酒に酔いひとの部屋を荒らし大声で笑い、



……最後には泣きだす。




掃除屋は嫌な仕事だ、まとまったクレジットを稼げる代わりに、まるで坂道を裸で転がった様に心が擦り切れる。



擦り傷だらけの“子猫”を抱き寄せ、赤子をあやす様に頭を撫でながら……


……泣き止み眠りにつくまで昔話なんかをしてやる。





仕事で何があったのかは訊かない。


俺がしてきた事と似たり寄ったりだ、訊くまでも無い。



俺の様に不細工な面と人工筋肉の塊なら『そんなのは屁でもない』ふりも楽だが


華奢な“子猫”の身体にはそれに見合った小柄な魂が入っている。




「…ね、“オーガ”」


「…なんだ?」


「ありがとね」


「…寝ろ」


「…抱こうとは思わないの?」


「…弱みに付け込む趣味は無いな」




「…ね、“オーガ”」


「なんだ?」


「…空って見た事ある?」


「…空?」


「空は青いんだって…見てみたいな」




第七階層は地下最下層だ。


第六階層に上がった者の話は聞いた事が無い。



「…いつか見れるかもな」


「ホント!?」


「……もう寝ろ」



“子猫”の心の擦り傷を、俺が肩代わりしてほんの少し擦りむいて。


泣き疲れ話し疲れた“子猫”を寝かしつけた…



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