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第七階層はいつも“雨”



…いつも“雨”だ。



路地裏だろうが、目抜き通りだろうが“晴れ”る事が無い。


…当たり前だ。


空そのものが無いのだから。




天井に張り巡らされた各種パイプ類から漏れだす水や油。


そして第六階層から流れ込む、正体なんぞ知る気にもならない滑めった代物が混ざり合い…


それらが天井から時には滴り落ち、時には土砂降りの様に降り注ぐ。


だからちょっと外出するにも防水コートが必要だ。




フードを目深に被り、ゴーグル越しにのぞく薄暗い街を歩けば、汗でコートの中はぐっしょりとする。


そんな時は防水コートの存在理由をつい疑ってしまうものだ。


“雨”に濡れなくたって汗でずぶ濡れになるのだからな…


とはいえ、天井から降る得体の知れない液体が背中を伝うおぞましさを許容出来るか?




いつも最後はそれを思い出し、防水コートのありがたみを再確認する。




そうして気を取り直した時、大抵ふと目に入るのは路地の隅に崩折れ転がってる運の無い奴らの姿だ。


息の根も既に止まり、膝や肩の辺りに鼠が這いまわっている。


これを見るとせっかく持ち直した気分がいつも台無しにされる……



……いつもの事だ。




真っ暗闇で見えもしないほど高い天井


かろうじて見えるパイプの流れ


迷路を作り出す為に存在するかの様なぐずぐずの壁


泥に半分埋まり、硝子の破片やら金属片やらが顔を見せる路面


瞬きっぱなしの街灯


どぎついネオン飾り


波の様なざわめき


屋台のスピーカーから流れる音楽だか雑音だか判らない代物


そして路地裏に転がるこの世からおさらばした奴の抜け殻。




……いつもの事、いつもの第七階層だ。





ここより下は無くて。


上の第六階層はどんな処かは知らない。




…お似合いだ。



そう、お似合いだ。


人工筋肉の塊で安宿のオンナも逃げ出す御面相にはお似合いの風景だ。



息を一つ吐いて。



それから腹拵えに人混みをぬって屋台の列へ向かった…





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