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prologue
―Prologue―
「特務監察官殿、ディスク類はこちらに纏めておきました」
「ありがとう…やれやれ、休暇も終わりですか」
白一色の広い室内。
数人の男女がそれぞれモニターの前に陣取りカタカタとキーボードを鳴らしている。
特務監察官と呼ばれた男はだいぶ若く見える。
おそらく童顔のせいだろう。
彼へ対する他の者の応対から、この部屋で働く者達の大半より階級は上のようだ。
銀縁の眼鏡を外し、代わりに鏡面コーティングされたサングラスをかける。言葉とは裏腹にまるで今から休暇をとるかの様な格好だった。
「室長!人です!地表に人が!!」
声を上げたオペレーターの周りに人だかりが出来た。
モニターには衛星からの映像が映し出されている。
放射能で死の世界となった地表を監視する衛星が、動くものを映したのは初めての事だろう。
モニターに映し出された荒野を、男が歩いている。
なにやら柩の様な物を背負っていた。
特務監察官と呼ばれた男も、つられてモニターを覗き込む…
と、その整った顔が…
…シニカルな笑みに歪んだ。