第9話 オーク討伐
オーク討伐緊急依頼のため『ナルバ村』入り口に集まった冒険者たち。
オーク10体の討伐と数がわかっているとはいえ、危険な依頼にもかかわらず
20人以上の人間が集まっていた。
ほとんどの人が革鎧に身を固め、盾と剣を持つ人。槍を持つ人や弓を構える人もいる。
魔法を使える人は、俺を含め3人しかいないようだ。
『冒険者ギルド』からは、ギルド長にジェシカさんも参加するみたい。
ジェシカさんって弓を使うんだな、結構様になってる・
「よし!時間だ、出発するぞ!」
ギルド長の合図で、20人以上の人が移動を始める。
俺たちの出発を見届けて、門番の兵士が門を固く閉めていく。
もし俺たちがオークを撃ちもらしても、村は守ろうということだろう。
俺は出発からすぐに、【オーク 探査】を使っている。
まだ引っかからないが、試しに【魔物 探査】を使うとあちこちで引っかかる。
でも、今回はオークの討伐が目的。だから襲ってこないように気を付けながら
オークの探査を続けていく。
村を出発して2時間が経過した。いまだオークを発見することができないが、
探査にも引っかかってない。
でも、ギルド長を始め冒険者たちに焦りの色は見えない。
そんな時、ジェシカさんが何かを見つけた。
「ギルド長、あそこに馬車が倒されています!」
「なに!全員、馬車の所で休憩だ」
ギルド長とジェシカさんは、倒された馬車の傍で話をしている。
冒険者たちは馬車の周りで休息をとっているが、油断はしていない。
俺も馬車の周りで、探査の魔法を使うと反応があった。
どうやら、倒された馬車からそう離れていないようだ。
俺はすぐに、ジェシカさんの所に報告に向かった。
「ジェシカさん、オークが近くにいます」
俺の声に、ジェシカさんをはじめギルド長や冒険者たちも反応する。
「恭也さん、オークの位置はわかりますか?」
「ん~、こっちの方角に3体います。他は見つけられませんでした」
ジェシカさんはギルド長に判断を仰いだ。
「ギルド長、もしかして…」
「間違いないだろう。全員、すぐに向かうぞ!油断するなよ!」
俺も、ギルド長たちと同じ方向へ走り出す。
探索魔法に引っかかったオークは3体だけ、残りのオークも気になるが
あの倒れていた馬車も気になる。
みんなを走って追いかけながら、
俺はあの馬車に乗っていた人の安否を心配してしまった。
そんな時、前方から声が上がった。
「いたぞ!オークが3体。あと人が3人いる、生死は不明!」
「オークを3人から引き離せ!」
ギルド長の声に、みんなが反応して引き離しにかかった。
俺は、オークを無視して3人に駆け寄る。
全員女性のようだが、傷だらけだ。メイドさんらしき人が足の骨を折っているらしく
変な方向に曲がっている。
とにかく俺は、1人1人治癒魔法をかけていく。
ジェシカさんも追いついてきて、俺が使っていた治癒魔法に驚いていた。
まず俺は、一番傷ついているメイドさんから治していく。
骨折を治し、あちこちについている切り傷を治し打撲を治す。
次に取り掛かったのは、年配の女性。といってもおそらく俺よりも若い。
彼女は打撲が酷かった。たぶんオークに押さえつけられた時のものだろう。
打撲を治して、擦り傷を治していく。
最後は、若い女性。17歳ぐらいかな、おそらく20歳いっていない。
彼女は切り傷と擦り傷が多かった。
俺の勘だが、逃げて走っているときに転んでできたものだろう。
俺は3人のケガや傷を治療し、最後におまけとして【クリーン】をかけてあげた。
服の土汚れや、髪についた土汚れなどが一気になくなりきれいになった。
「……恭也さん?」
なんか、ジェシカさんの声が怖かったような気がする。
「な、何でしょうか?」
「……私にも、かけてくれる?」
「へ?」
「恭也さんの【クリーン】の魔法です」
「あ、はい」
俺はジェシカさんに【クリーン】をかけると、戦っている皆のもとへ急いだ。
オーク3体を相手に一番前で戦っていたのがギルド長だ。
剣や槍を持った冒険者は、ギルド長に攻撃をしている隙にオークに攻撃をして
弱らせていって止めを刺す作戦だろう。
俺は一応探査をかけて、3体しかいないことを確認してオークへ魔法を使う。
「オークの動きを止めます!」
「頼むぞ、魔法使い!」
俺は土魔法で、オークの動きを止める。
「【ガイアチェーン】!」
オーク3体の足元の地面から、9本の鎖が飛び出し絡まっていく。
ブゥオオォォオォーー!
オークは自分に絡まってきた土の鎖を、引き千切ろうと力をこめるが引き千切ることができずに足搔いている。
「ギルド長、今です!」
「全員止めを刺せ!」
ギルド長が後方に退くと、冒険者全員の一斉攻撃がオークに止めを刺す。
冒険者たちの剣や槍、そして矢がオークの体や頭に突き刺さっていく。
オォォ……
オークの目から光がなくなり、そのまま大きな音を立てて崩れた。
俺が土魔法を解除すると、冒険者たちの声が上がった。
俺は冒険者たちの声を聴いていると、ギルド長が俺に声をかけてくれた。
「よくやったぞ、魔法使い!」
「ありがとうございます、ギルド長」
ギルド長は俺の背中を叩いてくるんだけど、痛い……
俺は苦笑いを浮かべて、他の冒険者たちの所へ治療のために移動した。
戦闘が終わってから、ジェシカさんが3人の女性を伴ってきた。
「ギルド長、被害にあわれた方たちをお連れしました」
「ごくろう、ジェシカ。
俺は『ナルバ村』の冒険者ギルドのギルド長、ボルクという」
一番年上の女性が、3人を代表して頭を下げて挨拶してくる。
「このたびは、助けていただきありがとうございます。
おかげさまでオークどもに乱暴される前に助けていただきました。
本当にありがとうございました」
女性3人が一緒に頭を下げて、ジェシカさんとギルド長の5人で
これからのことを話し合っていく。
読んでいただいてありがとうございます。