第70話 迷宮からの帰還
迷宮地下1階に上がってきてから、みんなが浮足立ってきたのはすぐにわかった。
何せ、普段なら引っかかることのない罠に引っかかっていたからだ。
だが、ここは地下1階。
罠は比較的安全なのだが、見え見えの落とし穴に落ちる人たちが出たかと思うと
今度は不用意に壁を触り、上から物が落ちてきてケガをする。
これには三山さんも、ため息が出っぱなしだ。
何度も、気を引き締めて地下1階を通り抜けようと注意するも
罠にはまる人は後を絶たない。
何とか、地下1階の中央にほど近い広い部屋で休憩をとるものの
地上へ早く出たいのか、休憩もそこそこにして先へ進もうとする。
これにはさすがに三山さんも怒ってみんなに注意するはめになっていた。
俺たちの元に戻った時は、体力的にではなく精神的に疲れているようだった。
こんなので、地上1階への階段までもつのかな?
休憩を終え、再び進みだす。
その足取りは、みんな重い物だった。
そして、迷宮を地上に向けて進むこと3時間。
ようやく地下1階から、地上1階への階段が見えてきた。
地下1階の迷宮を進む足は、重い物だったがようやくこの迷宮も終わる。
「三山さん、あれが地上への階段です。
ようやくこの迷宮も終わりが見えてきましたよ」
「……よかった、ようやく地上へ戻れる」
三山さんたちは、迷宮に挑み始めてから1か月の時間がたっている。
絵美さんが俺のもとに助けを求めてきたときも、俺たちが迷宮に潜り始めた時も
迷宮内で『デビルロード』の恐怖と戦いながらいたようだ。
地下1階を通るときに、この迷宮内でどう過ごしていたか話を聞いた。
でも、その迷宮とももうすぐお別れだろう。
他の100人前後のみんなも最後の力を振り絞って、地上へ進んでいる。
地下1階から地上1階へ上った時、みんなその場にへたり込んでしまった。
「三山さん、ここはまだ迷宮内です。
罠はありませんが、頑張って迷宮を抜けましょう」
三山さんは、声なくただ頷いた。
「皆さん!もう少しでこの迷宮を抜けれます、あと少しです、頑張りましょう!」
俺の励ましを聞いて、何とか立ち上がり迷宮内を進んでいく。
1時間ほど休み休み進んでようやく出口を抜けた。
迷宮を抜けると、みんなもう立ち上がる力もなくその場に座り込んでしまった。
俺たちも、しょうがないとみんなに付き合ってシャルたちと集まって休憩にした。
迷宮そばにいたギルド職員の人が、苦笑いを浮かべていたが
迷宮から出てくる人は大抵の人がこうなるらしく、気にしていない様子だった。
1時間ほど、みんなで休憩をとっていたが三山さんがみんなに話をして
この場で解散、そして勇者たちは王都に戻り『エリクサー』を王に渡し
お孫さんの呪いを解いた後、正式に迷宮都市に戻ってくる予定だそうだ。
今度は、ダンジョンに挑戦してレベルを上げると言っていた。
絵美さんも勝君と無事帰還でき、依頼達成となり報酬は冒険者ギルドで
受け取ってくださいとのことだった。
これからの勝君とのことで、頭がいっぱいなのだろう。
それと『デビルロード』の件は、三山さんたちと相談したが
ギルドの探索隊が入っていたことから、その報告を待ってどうするかを決めるそうだ。
あと、グレースさんはこのままこの迷宮都市に残るとのこと。
迷宮には潜れたけど、ダンジョンはまだ挑戦していないと意気込んでいた。
三山さんたちが王都から帰ってから
いっしょにダンジョンへ挑戦するということらしい。
なにわともあれ、これで俺たちは依頼達成とともに『ナルバ』の町に帰ることができる。
もう『ナルバ』の町が故郷のようになっているよな。
あと、王都までは三山さんたち勇者の代表と一緒に行くことが決まった。
ついでだからと、送って行ってほしいそうだ。
シャルたちは大歓迎していたから、俺に拒否する理由はない。
こうして、この大変な依頼は幕を閉じたのだった。
まだ、問題は山積しているが俺たちが積極的にかかわることはないだろう。
「三山さん、今日は宿に泊まって明日のお昼頃に出発としましょう」
「一条さん、気を使ってもらって悪いわね」
「では、明日のお昼ぐらいにこの場所で待ち合わせでいいですか?」
「ええ、わかったわ。
他の王都に行く勇者の人には、私から知らせておくから」
「では、また明日…」
三山さんたち迷宮に潜った人たちと別れて、宿に向かう。
グレースさんは、絵美さんと一緒に三山さんたちの帰還を待つそうで
この場で別れた。
絵美さんに感謝され、勝君に感謝され、さらにほかの人たちからも感謝された。
まあ、ほとんどの人たちの感謝の対象はシャルたち女性陣だったが…
ここまで読んでくれてありがとう。
ネタに詰まったので、少し考える時間をもらいます。




