第66話 ドラゴンさん
地下3階は、地下2階と同じつくりだったが明らかに雰囲気が違った。
この階に降り立った俺たちは、明らかに違う空気に戸惑っていた。
「…絵美さん、この階は明らかに今までの階と違いますわね」
グレースさんも俺たちと同じように、空気の違いを感じていた。
「はい、この階以降は魔物の強さが変わります。
それに伴い、仕掛けられた罠も凶悪なものが増えるようです」
絵美さんが、真剣に俺たちに注意してくる。
絵美さんの注意を心にとどめ、俺たちは進んでいく。
曲がり角や、扉を開けた時に魔物に襲われるようになり
その対処に苦労するようになった。
また、罠は解除を優先しどうしても解除できないときは
石や身代わり人形などを使って、わざと発動させてかわしていく。
こうして俺たちは、地下3階・地下4階・地下5階と踏破していった。
問題が起きたのは、地下6階の中央付近にたどり着いた時だ。
「……絵美さん、ここはボス部屋ですか?」
絵美さんは、俺の質問に地図を見ながら答えてくれる。
「え~と、いえ、ここは中央広場のような場所のはずです」
目の前の明らかに怪しい大門を前にして、俺たちは止まっていた。
「絵美さんは、この門を通ったのでしょう?」
「いいえグレースさん、私たちはこの門は確認していませんでしたよ」
「う~ん、ということはどこかでルートを間違えたかな?」
絵美さんは、地図を再確認しながら
「…ルートはあっています。
この地下6階の中央は、どう進もうと必ずここを通るようになっていますから」
「どういうことでしょうか?
この迷宮は、中は変わらないということでしたよね、絵美さん」
「そのはずです、この迷宮に長く潜っている人たちの意見ですから
信憑性は確かですよ」
シャルの問いに、少し焦ったように答える絵美さん。
「…もしかすると、これも『デビルロード』出現の影響かもしれませんわね」
「グレースさん、それはどういうことです?」
「おそらく、絵美さんの持っている地図は正確だと思われます。
でも、こういう話を聞いたことあります。
『デビルが出現する場所は、迷宮化する』と」
絵美さんの顔が、青ざめていく。
「それじゃあ、この迷宮も?」
グレースさんは、無言で頷き話し始める。
「その昔、あるお城でデビル召喚が行われたことがあります。
何故召喚したかは、召喚者本人が生きていないのでわかりませんが
デビル召喚後、普通のお城は迷宮化して後々大変だったとか」
「グレースさん、今もそのお城は…」
エリーが、俺の服の袖をつかみながら確認する。
「ご安心なさい、今そのお城は昔の勇者たちによってデビルもろとも
消滅しましたわ」
エリー達は、ホッとしてたようだ。
「さて、この門を通らないと先には行けないようだし
覚悟を決めて行きますか?」
皆覚悟を決めて、頷いてくれた。
俺たちは、戦いの準備を終わらせると大門の扉を開けてく。
錆びついた扉を開けるような音が、迷宮内に響くと扉は勝手に全開まで開く。
大門の先にあったのは、絵美さんの地図と同じ中央広場。
だだっ広い石の地面が広がっていたが、その中央には大きな魔物がいた。
「え~と、俺の目がおかしくなければあれって『ドラゴン』じゃないかな?」
「あなたの目はおかしくありませんわよ、わたくしも『ドラゴン』に見えます」
「…私、初めて『ドラゴン』を見ました」
俺とグレースさんと絵美さんが、確認しているそばで
シャルたちは少し震えていたが、気合を入れなおし戦闘準備をしていた。
「恭也様、行きましょう!」
シャルたちの気合に負けて、俺たちは中央にいる『ドラゴン』の傍までいく。
…近くに行くと、見上げるような大きさにちびりそうだ。
でも『ドラゴン』は何もしてこなかった。
ただ、俺たちを観察するように目だけがギロリと見つめている。
俺は何をしていいのか分からず、目の前の『ドラゴン』に聞いてみた。
「あの~、ここを通って先に進んでいいですかね?」
『ん? おお、すまんな。我も戸惑っていたのだ。
本来なら、我のような存在はもっと下の階にいるべき存在。
それが、いつの間にかここに飛ばされたようなのでな』
「それで、俺たちはあなたと戦うのでしょうか?」
この台詞に、みんなが反応し構えをとる。
『ほっほっほ、そんなに身構えなくても大丈夫だ。
我は試練を与えて、道を通す存在。
だから、戦う必要はない』
皆構えを解き、ホッとした表情をしている。
『……どうやら、この迷宮に『デビルロード』が出たようだな』
ドラゴンが目を瞑り、上を向いて何かを調べるようにしている。
「分かりますか?」
『うむ、我には迷宮内部を探査できるからな』
絵美さんが、どうしても気になっていることを『ドラゴン』に質問する。
「あの、『デビルロード』の近くに人の反応はありませんか?」
『ん?少し待て……』
絵美さんは、固唾をのんで『ドラゴン』の言葉を待っている。
それは、俺たちも同じだった。
ドラゴンさんが、瞑っていた目を開いた。
『「デビルロード」の近くには、いないな。
一つ上の階の、入り口近くにある広い隠し部屋にいるようだな』
「あの、何人いるか分かりますか?」
『そこまでは我でもわからん。
だが、行って確かめるといいだろう。死人は出てないようだからな』
絵美さんの顔が明るくなる。
俺たちも安堵の表情が浮かぶ。
『じゃが、ここを通るならば試練を受けてもらうがの』
その言葉に、俺たちは苦笑いになる。
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