第62話 国境での戦闘
200万年前って、この世界ってそんなに変革?が起きてないのか…
俺も絵美さんも、驚きを隠せないでいた。
「一条さん、この世界ってどうなっているんですか?
地球だったら、考えられないことですよ?」
「ああ、産業革命が起きてもおかしくないのに何も起きずに廃れるなんて…」
だが俺はそう言葉にしたところで気が付いた。
「…そうか、前提が違うのか」
「え? 何ですか??」
「絵美さん、前提が違うんですよ。
この世界にあって地球にないものがあるでしょう?」
「……魔法ですか?」
「それと、魔物の存在ですね。
おそらく俺の予想だけど、確かに蒸気機関車はあったんですよ。ただ、問題があった」
「それは…安全ですか?」
「そう、魔物がいろんなところにいるおかげでレールの安全が確保できない。
よしんば確保できたとしても、
戦争・盗賊・大型の魔物と対処が追い付かなかったんじゃないかな」
俺と絵美さんが2人で話している内容を聞いて、グレースさんが口をはさむ。
「どうやら、蒸気機関というものは、
この世界には合わないもの見たいですわね。…残念ですわ」
グレースさんのガッカリ感がすごいな…
こんな雑談をしながら国境を目指していた俺たちの前に、
ようやく国境の砦が見えてきた。
…でも、様子がおかしい。
「恭也様、あれ煙ではありませんか? しかも黒い煙ってことは…」
シャルが煙の色で、国境の砦に何かあったことに気づく。
「みんな、捕まって。国境に急ぐぞ!
それと、戦闘準備しておいてくれ」
俺は後ろの座席に座っている皆に指示を出し、ゴーレムバスを走らせる。
10分もしないうちに国境の全貌が見えてきたが、
「あれは、襲われているみたいだな…」
その時グレースさんが、敵に気が付いた。
「襲っているのは『オーク』ですわ!」
その言葉と同時に、砦からけたたましい咆哮が聞こえた。
――グゥオオオォォォォォォーー!!!
俺はあまりのうるささに、ゴーレムバスを急ハンドルに急停止させた。
「「きゃあっ!」」
いきなりの急停止に、立ち上がっていたグレースさんと絵美さんが
運転席の俺に抱き着く形になる。
あ、柔らかいものが…
っと、いかんいかん。
「みんな、大丈夫か?」
シャルたちは座っていたことで、大丈夫なようだ。
グレースさんと絵美さんは、
すぐに俺から離れて何ごともなかったようにしている。
「このまま、国境の砦に突っ込みます。
皆は、このゴーレムバスの中から『オーク』に攻撃してくれ」
皆が頷いたのを確認して、再びゴーレムバスを走らせる。
さらに国境の砦に近づくと、襲っているのが『オーク』だとわかってきたが
その数が問題だ。
ざっと見ただけでも30以上はいる。
俺はすぐに方針を転換して、みんなに指示を出した。
「シャルたちは、砦の兵士たちの治療にあたってくれ!
俺が『オーク』を足止めしますんで、絵美さんとグレースさんは止めを!」
そこにユニが、割って入る。
「…私も止めに回る」
「わかった、ユニも絵美さんたちとお願いする」
「…任せて」
俺たちの乗ったゴーレムバスが、国境砦の大門前で停止!
「今だ!【ガイアロックチェーン】!!」
オークの足元から無数の石でできた鎖が飛び出し、オークに絡まっていく。
―――グオオォォォォォォ
オークたちがもがけばもがくほど、石の鎖は絡まり身動きがとれなくなっていく。
そこへ、ゴーレムバスの中から皆が飛び出し
シャルたちは、倒れている兵士に近づき治療を始める。
グレースさんたちは、1体1体オークの止めを刺していった。
絵美さんは自前の槍で、グレースさんはレイピアで心臓を刺していった。
ユニはオークの首の骨を折って息の根を止めていた。
…怖いぞ? ユニ。
14歳の女の子がすることじゃないような気がするが、まあいいか。
俺が倒されていくオークを見ていると、1体だけ他のオークと違うやつがいる。
俺がそのオークに使づくと、そのオークはもがきながら話しかけてきた。
「オノレ、ニンゲン、ワレラニ、サカライオッテ…」
「喋れるのか? 他のオークと違うのか?」
「マモノガ、ヒトノコトバヲ、ツカウノガ、オカシイカ?」
オークはニヤニヤと笑っている。
「それは…」
俺が喋ろうとしたとき、絵美さんとグレースさんが俺に近づいてきた。
「一条さん、オークの殲滅終わりました。残りはこのオークだけです」
「すぐに止めを…」
絵美さんの言葉を聞いて、オークがグレースさんの言葉を遮る。
「フ・ザ・ケ・ル・ナ・ヨ…」
オークの様子が変わり、拘束していた石の鎖にひびが入る。
「まずい!二人ともこっちへ!」
俺が絵美さんとグレースさんの手を引っ張り、オークから急いで離れると
オークを拘束していた石の鎖が砕け散る。
立ち上がるオークは、全身の色が赤く変化し
漏れ出る魔力が増大しているようだ。
俺は危険を察知し、すぐにオークを取り囲むように魔法を行使する。
「【アイアンドームウォール】!」
呪文を唱えると、鉄でできた壁がオークを閉じ込める。
『ガン!』と閉じ込めたと同時に鉄の壁の一部が外側に飛び出た。
「な! 鉄の壁を殴ってあの威力か!」
すぐに『ガン!』『ガン!』という音とともに鉄の壁が飛び出してくる。
「一条さん、あれでは壁が持ちません!」
絵美さんが焦った声を上げる。
「ならば、くし刺しにする【アイアンメイデン】!!」
鉄の壁が一瞬震えたかと思うと、中から叫び声が聞こえた。
「ガアアァ!!」
そして、辺りは静まり返る…
ここまで読んでくれてありがとう。




