第61話 王都の真実と衝撃
王都を抜け南の『べルスベン王国』との国境を目指す恭也一行。
ゴーレムバスに驚愕していた絵美さんやグレースさんも、乗って移動している間に
だいぶ慣れた様子だ。
今では、シャルたちといろんなことをお喋りしながら情報交換していた。
「じゃあ、王都の噂ってデマなんですか?」
エリーが興味津々に、グレースさんに聞いている。
エリーの声が大きいから、俺やシャルたちにも聞こえているようだ。
「そうですわエリー、王都の噂なんてそのほとんどが嘘ですわ」
「そ、それじゃあ、どうしてあんな噂が流れているの?」
絵美さんも、気になっていたようだ…
俺も気になっているから、運転しながら耳だけグレースさんの方に注目する。
「確かに、今この国を取り巻く環境はよくありませんわ。
帝国との国境での『ドラゴン事件』や、『勇者や異世界人の脱走事件』などね」
「……脱走って」
ああ、勇者や異世界人たちは脱走扱いになっているのか…
でも、王都でもドラゴンのことは話題になってくれていたんだな。
当事者としては、何か複雑な心境だ…
「絵美さん、あくまでも国の上はそう捉えているみたいですわよ。
…コホン、話を戻しますわ。
周りでいろんな情報が飛び交う中、貴族の間では『ポーションの買占め』が
行われましたわよね?」
「…そう、王都の人たち困ってた」
確かに、ユニの言う通り困っていたな。
特に冒険者とか医者とか、あとは教会関係だったか…
「でもその買い占めは、帝国の『旧フェルバニー』への侵攻が原因ですわね。
『旧フェルバニー』が攻めてきたときは混乱は起こりませんでしたが、
帝国が隣国の『旧フェルバニー』に侵攻した時は慌てました。
これは、貴族たちの間で帝国が大きな脅威と認識しているからですわ」
「そうか、帝国の脅威が分かっているから余裕がなくなった結果
ポーションの買い占めに走り、自分たちの身を守ろうとしたのね」
アミが、すごく納得したようだ。
クロエも頷いている。
「そうですわアミちゃん。そして『ドラゴン事件』で貴族たちの恐怖は、
一気に駆り立てられ、自分の領地へ引きこもったという訳ですわ。
だから、王都の貴族の屋敷がもぬけの殻なのは
『腰抜け貴族の逃亡』が原因ですわよ」
「「ぶふっ、あはははは~」
絵美さんとエリーが大笑いしている…
アミとクロエとユニは、肩を震わせてるぞ。我慢することないのに…
シャルと俺は苦笑いだ。
「で、ではグレースさん、王都の人たちが少なくなっているのは?」
「それは簡単ですわシャルさん。
王都ではポーションが買えない、売っていても手が届かない。
となれば、ポーションが安く買える町や村に移動するでしょ?」
「なるほど、確かに安いところへ移動するわね」
絵美さんは思いつかなかったようだな。
「王都の人がいなくなった原因は、ポーションの買い占めが原因ね」
「わぁ~」
アミとクロエとユニが、グレースさんに拍手している。
「じゃあ、じゃあ、王様以外の王家の方が疎開してるって噂は?」
「それもただの噂ですわね。
現に王太子さま夫妻とお子様たちはお城にいますし、
他のご兄弟だと、弟君は騎士団に入っていて、今は国境勤務。
妹君は隣国の学園で勉学に励まれているとか。
もう1人の妹君は、治癒魔法に優れた家庭教師が付いたとかで
学園に入るまでその家庭教師について治癒魔法を修行しているそうですわよ」
「へえ~、よくご存じですね~」
エリーは、ますます尊敬しているみたいだ。
「ま、まあ、わたくしも貴族相手に商売をすることがありますからね」
む!グレースが腕を組んで鼻高々って感じだが、
俺には、バックミラーに移ったグレースが腕を組んで胸を強調しているように見えるぞ。
…シャルには負けるが、なかなか大きいな。
「ん? どうしましたか、恭也様?」
おっと、シャルが鋭いぞ…
「いや、なかなかの博識だと思ってね。
じゃあ、王都で何か悪いことが起こりそうってわけではないんですね?」
「ええ、心配はいらないと思うわよ」
自信ありげだな。何か根拠があるのかな?
「何か、確信があるんですか?」
「心配性ね、禿げるわよ心配ばっかりしていると。
まあ、この確信はある本の影響ね」
禿げるか! しかし、そんなすごい本があるのかな?
「本ですか?」
「ええ、それは召喚する力のある国にだけ伝わっている本でね、
『勇者召喚の手引書』というものがあるのよ」
「そ、そんな本が…」
絵美さんも俺も驚いたな…
もしそんな本があるなら、いったいこの世界は何回勇者召喚をしたんだ?
「わたくしも本の中を詳しく読んだ訳ではありませんが、
本の中の資料の1つに、勇者召喚をした国が
他国に滅ぼされたことはなかったようですわよ」
「それが、確信の正体ですか…」
「おそらくですが『勇者』や『異世界人』といった方たちが、
この世界の人たちにとってかなりの脅威だったためですわね」
ん~、桁外れの化け物って感覚なんだろうな…
「そう言えば、その本には面白い資料が他にもありましたわね」
「え、どんなものですか?」
絵美さんが興味を持ったようだ。
「確か『異世界人たちが伝えた技術』という項目に、
廃れた技術があるとか書いてありましたわね」
「廃れた?」
「ええ、その中の1つに『蒸気機関』とかなんとか。
絵美さんなら分かるのではなくて?」
蒸気機関って、あれか?鉄道とか蒸気タービンとか??
「ええ、わかりますけど…」
「ホントですの? それはぜひともわたくし知りたいですわ!」
俺はちょっと気になったことがあったので、グレースさんに聞いてみた。
「ちょっといいかな?
グレースさん、その廃れた『蒸気機関』っていつ頃の話ですか?」
グレースさんは、少しテンションを落として答えてくれる。
「確か、200万年ほど前のことだと書いてあったと思いますわ」
……は?!
読んでくれてありがとうございます。
話がなかなか進みませんが、お許しください。




